「食後になると、どうしてもタバコが頭に浮かぶ」「お酒を飲むと、つい手が伸びそうになる」「仕事で嫌なことがあると、一服したくてたまらない」――禁煙中、ふとした瞬間に襲ってくる「吸いたい」という気持ちに、どう向き合えばよいか悩んでいませんか。
吸いたい気持ちは、いつ来るかある程度予測でき、やり過ごし方もあります。この記事では、吸いたくなったその瞬間にできる対処法と、食後・飲酒・コーヒー・ストレスなどきっかけ別の代替行動を具体的に紹介します。禁煙中の方はもちろん、これから禁煙を始める方の準備にも役立ててください。
「吸いたい気持ち」はなぜ起こる?
禁煙中の「吸いたい」という気持ちには、大きく分けて2つの種類があると考えられています。
ニコチン切れによる欲求
体内のニコチンが減ることで起こる欲求です。禁煙を始めて数日〜数週間の時期に強く出やすく、イライラや落ち着かなさなどの離脱症状を伴うことがあります。こうした体の反応や時期ごとの経過については、ニコチン離脱症状はいつまで続く?で詳しく解説しています。
習慣や場面と結びついた欲求
「食後の一服」「コーヒーとタバコ」「お酒の席でのタバコ」など、長年の習慣によって、特定の場面とタバコが脳の中で強く結びついていることがあります。この場合、ニコチンが体から抜けたあとでも、その場面になると反射的に吸いたくなることがあります。この記事では主に、こうした場面やきっかけで起こる「吸いたい」への対処に焦点を当てます。
吸いたい気持ちの波は数分で引くことが多い
強い喫煙欲求は、ずっと続くわけではありません。多くの場合、数分程度でピークを越え、波が引いていくといわれています。つまり、その数分間をどう過ごすかがカギになります。「この波はいずれ引いていく」と知っておくだけでも、気持ちに余裕が生まれます。
吸いたくなったその瞬間にできる「4つのD」
喫煙欲求への対処法としてよく知られているのが、英語の頭文字をとった「4つのD」です。ここでは、それぞれを日常の中でどう実践するかを具体的に紹介します。
Delay(遅らせる):「あと5分」と先延ばしにする
「もう二度と吸わない」と力むより、「とりあえず5分待ってみよう」と考えるほうが取り組みやすいものです。スマートフォンのタイマーを5分にセットし、鳴ったときにまだ吸いたいかを確かめてみましょう。多くの場合、そのころには欲求が弱まっています。
Deep breathing(深呼吸する):ゆっくり吐く呼吸
鼻から4秒ほどかけて息を吸い、口から6〜8秒ほどかけてゆっくり吐き出します。これを数回繰り返すだけでも、気持ちが落ち着きやすくなります。タバコを吸うときの「深く吸って吐く」動作を、深呼吸で置き換えるイメージです。
Drink water(水を飲む):冷たい水やお茶を少しずつ
冷たい水や無糖のお茶を、ひと口ずつゆっくり飲みましょう。口や手を動かすことで気がまぎれ、口寂しさもやわらぎます。いつでも飲めるよう、マイボトルを持ち歩くのがおすすめです。
Do something else(ほかのことをする):その場を離れる
吸いたくなった場所から物理的に離れるのが効果的です。席を立って歩く、歯を磨く、手を洗う、ストレッチをする、家族や友人にメッセージを送るなど、すぐにできる行動をいくつか決めておきましょう。手持ち無沙汰がきっかけになる方は、ペンやストレスボールなど手を動かせるものを用意しておくのも一案です。
【きっかけ別】吸いたくなる場面と代替行動
自分がどんな場面で吸いたくなるかがわかれば、あらかじめ対策を用意できます。よくあるきっかけと、代わりにできる行動の例を表にまとめました。
| きっかけ | 起こりやすい状況 | 代わりにできる行動の例 |
|---|---|---|
| 起床後 | 目覚めの一服が習慣になっている | 起きたらすぐ水を1杯飲む、顔を洗う、カーテンを開けて軽くストレッチする |
| 食後 | 食事が終わると反射的に吸いたくなる | 食べ終えたらすぐに席を立つ、歯を磨く、無糖のガムをかむ、食後の散歩をする |
| コーヒー | コーヒーとタバコがセットになっている | しばらくお茶や炭酸水に替える、飲む場所や時間を変える、カップを持つ手と反対の手で何かを持つ |
| 飲酒 | 酔うと気がゆるみ、周りの喫煙者につられやすい | 禁煙初期は飲み会を控える、禁煙席を選ぶ、量を決めて早めに帰る、周りに禁煙中と伝える |
| ストレス | 仕事のトラブルや人間関係でイライラしたとき | 深呼吸、その場を離れて歩く、好きな音楽を聴く、信頼できる人に話す |
| 休憩時間 | 仕事の区切りに喫煙所へ行く習慣がある | 喫煙所以外の休憩場所を決める、外の空気を吸いに行く、飲み物を買いに行く |
| 運転中 | 渋滞や長時間の運転で手持ち無沙汰になる | 車内のタバコやライターを処分する、ガムや水を用意する、音楽やラジオを流す |
| 喫煙者のそば | 同僚や友人が吸っているのを見たとき | 喫煙所に近づかない、禁煙中であることを伝えて誘いを断る |
きっかけ別の対策をもう少し詳しく
食後:「食べ終わったらすぐ動く」を習慣に
食後の一服は、多くの喫煙者にとって最も手放しにくい習慣のひとつです。食べ終わったあとにテーブルでくつろいでいると、吸いたい気持ちが強まりやすくなります。「食べ終えたらすぐに食器を片づける」「すぐに歯を磨く」など、食後の行動を新しく決めておきましょう。歯を磨いて口の中がさっぱりすると、吸いたい気持ちが薄れやすいといわれています。
コーヒー:組み合わせを一時的に変える
コーヒーを飲むとタバコが欲しくなる方は、禁煙初期だけでもお茶やハーブティーなどに替えてみるのも方法です。いつもと違う場所で飲む、カップを替えるなど、「いつもの状況」を少し崩すだけでも効果が期待できます。また、禁煙するとカフェインの作用を以前より強く感じることがあるともいわれるため、そわそわ感が気になる方はコーヒーの量を控えめにしてみましょう。
飲酒:禁煙初期は特に注意
お酒を飲むと気がゆるみ、「1本くらいなら」と判断が甘くなりがちです。禁煙を再開してしまうきっかけとして、飲酒の場面は特に多いといわれています。禁煙を始めて最初の数週間は、できれば飲み会を控えるか、参加する場合も「喫煙席を避ける」「量と時間を決める」「タバコを持っていない」など、事前に対策を決めておきましょう。
ストレス:タバコ以外の「ほっとする方法」を持つ
「タバコはストレス解消になる」と感じている方は多いですが、その「ほっとする感覚」の多くは、ニコチン切れの不快感が一時的に解消されているためと考えられています。ストレスを感じたときに頼れる方法を、タバコ以外にいくつか用意しておきましょう。短い散歩、深呼吸、音楽、入浴、誰かに話を聞いてもらうなど、自分に合う方法を見つけることが大切です。
吸いたい気持ちを減らすための環境づくり
その場でやり過ごす方法に加えて、そもそも吸いたくなる場面を減らす工夫も役立ちます。
- タバコ関連のものを手元に置かない:タバコ、ライター、灰皿、加熱式タバコの機器などは禁煙開始日までに処分する
- 「吸いたくなったときリスト」をつくる:自分に合う代替行動を書き出し、スマートフォンのメモなどに入れておく
- 吸いたくなった記録をつける:時間、場所、きっかけ、強さ、どう対処したかをメモすると、自分のパターンが見えてくる
- 「もしAならBする」と決めておく:「食後に吸いたくなったら歯を磨く」のように、場面と行動をセットで決めておくと迷わず動ける
- 周囲に禁煙を伝える:タバコを勧められにくくなり、つらいときに支えてもらいやすくなる
禁煙に成功する人の考え方や準備については、禁煙に成功する人の特徴7つもあわせてご覧ください。
口寂しさ対策で気をつけたいこと
口寂しさをまぎらわすために、甘いお菓子やジュースに頼りすぎると、体重増加につながりやすくなります。無糖のガム、氷、野菜スティック、無糖の飲み物など、カロリーの少ないものを選ぶようにしましょう。
なお、市販のニコチンガムは「禁煙補助薬」であり、一般的なガムとは使い方が異なります。かみ方や使用量にルールがあるため、使用する際は薬剤師に相談し、添付文書に従って使いましょう。
どうしても欲求が強いときは禁煙外来へ
工夫を重ねても吸いたい気持ちが強く、何度も禁煙に失敗してしまう場合は、ニコチン依存の影響が大きい可能性があります。そうした場合は、一人で我慢し続けるより、禁煙外来で治療を受けることを検討してみましょう。
禁煙外来では、ニコチンパッチ(貼り薬)やバレニクリン(飲み薬)などの禁煙補助薬で吸いたい気持ちや離脱症状を和らげながら、医師と一緒に吸いたくなる場面への対策を立てていきます。ただし、薬には吐き気や頭痛、皮膚のかぶれ、睡眠の変化などの副作用が出る可能性があり、バレニクリンは供給状況が時期により変動しているため、処方できるかどうかは受診先で確認が必要です。
禁煙補助薬を海外から個人輸入したり、正規でない通販で購入したりすることは、偽造品や健康被害のリスクがあるため推奨されません。医師の診察のもとで使用しましょう。
お近くの医療機関は、全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。
まとめ
禁煙中の「吸いたい」という気持ちは、多くの場合数分で波が引いていきます。その数分間を、遅らせる・深呼吸・水を飲む・ほかのことをする、という「4つのD」でやり過ごすことが基本です。
さらに、食後・コーヒー・飲酒・ストレスなど、自分が吸いたくなるきっかけを把握し、場面ごとの代わりの行動を決めておけば、いざというときに迷わず対処できます。それでもつらい場合は、禁煙外来で薬と医師のサポートを受けることも検討してみてください。
この記事のポイント
- 吸いたい気持ちには「ニコチン切れ」と「習慣・場面」による2種類がある
- 強い欲求は数分程度で波が引くことが多い
- 遅らせる・深呼吸・水を飲む・ほかのことをする「4つのD」が基本の対処法
- 食後・コーヒー・飲酒・ストレスなど、きっかけ別に代わりの行動を決めておく
- 欲求が強く失敗を繰り返す場合は、禁煙外来での治療も選択肢になる
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。