「家では吸わずにいられるのに、職場ではつい喫煙所に足が向いてしまう」「喫煙所での雑談が、仕事の情報交換の場になっている」「休憩時間に何をすればいいのかわからない」。禁煙を考えている会社員の方にとって、職場は禁煙の大きな壁になりやすい場所です。
職場での喫煙は、休憩のタイミングや仕事のストレス、同僚との付き合いなどと強く結びついています。そのため、「気合い」だけでなく、職場ならではの環境に合わせた準備をしておくことが、禁煙を続けるポイントになります。
この記事では、喫煙所に行かない休憩時間の過ごし方、同僚や上司への伝え方、会社や健康保険組合の禁煙支援の調べ方、仕事と両立しやすい禁煙外来の選び方を解説します。
職場で禁煙が難しくなる3つの理由
1. 休憩時間と喫煙が結びついている
「休憩=タバコ」という習慣が長く続いていると、休憩時間になるだけで吸いたい気持ちが湧いてくることがあります。仕事の区切りや会議のあとなど、特定のタイミングと喫煙が結びついていることも少なくありません。
2. 喫煙所が人付き合いの場になっている
喫煙所は、部署を越えた雑談や情報交換の場になっていることもあります。「喫煙所に行かなくなると、人間関係や情報から取り残されるのでは」という不安が、禁煙をためらう理由になることもあるでしょう。
3. 仕事のストレスや忙しさ
締め切りや対人関係のストレスを感じたとき、タバコで気分を切り替える習慣がある方も多いはずです。忙しい時期は、禁煙外来に通う時間を確保しにくいという悩みもあります。
喫煙所に行かない休憩時間の過ごし方
禁煙を始めたら、これまで喫煙所で過ごしていた時間を別の行動で埋めることが大切です。場面ごとの代替案を表にまとめました。自分の職場で無理なくできるものを選んで、あらかじめ決めておきましょう。
| これまでの喫煙のタイミング | 代わりにできる行動の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 出勤前・始業前 | 一駅分歩く、コンビニに寄らずに出社する、デスクで温かいお茶を飲む | 通勤ルートを変えて喫煙所の前を通らないようにする |
| 午前・午後の小休憩 | 階段の上り下り、ストレッチ、給湯室で水やお茶を飲む | 「席を立って体を動かす」ことでリフレッシュ感を得る |
| 昼食後 | すぐに歯みがきをする、10分ほど散歩する | 食後の一服の代わりを決めておくと迷わない |
| 会議・電話のあと | 深呼吸を数回、窓の外を眺める、次の作業のメモを書く | 「区切りの儀式」をタバコ以外に置き換える |
| イライラ・行き詰まったとき | 冷たい水を飲む、手を洗う、短時間その場を離れる | 吸いたい気持ちの波は数分で弱まることが多いとされる |
| 残業中・仕事帰り | 軽食や温かい飲み物で一息つく、帰宅後の楽しみを用意する | 疲れているときは欲求が強まりやすいので無理をしすぎない |
デスクに置いておくと便利なもの
- 水筒やペットボトルの水・お茶
- シュガーレスのガムや無糖のタブレット
- 携帯用の歯ブラシセット
- 手を動かせる小物(ペン、メモ帳など)
吸いたくなった瞬間の対処法はタバコを吸いたくなったときの対処法でも詳しく紹介しています。
同僚・上司への伝え方
禁煙を始めることを周りに伝えるかどうかは自由ですが、伝えておくことで、喫煙所に誘われにくくなったり、協力を得やすくなったりするメリットがあります。
伝え方の例
| 相手 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 喫煙所仲間の同僚 | 「今、禁煙に挑戦中なので、しばらく喫煙所には行かないようにしています。話はまた休憩室で聞かせてください」 |
| 上司 | 「禁煙外来に通い始めたので、何回か通院で時間をいただくことがあるかもしれません。業務に支障が出ないよう調整します」 |
| 非喫煙者の同僚 | 「禁煙を始めたので、もしイライラしていたら気にしないでください。休憩のときに散歩に付き合ってもらえるとうれしいです」 |
| 誘われたときの断り方 | 「ありがとう、今日は飲み物を買いに行くのでやめておきます」と、代わりの予定を添える |
伝えるときのポイント
- 相手を否定しない:「タバコは体に悪いから」と相手の喫煙を批判するような言い方は避ける
- 関係を続けたい気持ちを伝える:喫煙所以外の場で話す機会をつくる
- 無理に全員に言わなくてよい:伝える相手は、自分が話しやすい人だけで十分
喫煙所での情報交換が気になる場合は、ランチや休憩室での雑談など、別のコミュニケーションの場を意識的に増やしていくとよいでしょう。
会社・健康保険組合の禁煙支援を確認しよう
最近では、従業員の健康づくりに取り組む企業や、加入者の禁煙を支援する健康保険組合も増えています。内容や条件は会社・保険者ごとに大きく異なりますが、次のような支援が行われている場合があります。
| 支援の例 | 内容のイメージ | 確認先 |
|---|---|---|
| 禁煙治療費の補助 | 禁煙外来の自己負担分の一部などを補助 | 人事・総務、健康保険組合 |
| 禁煙プログラムの提供 | オンライン禁煙プログラムや禁煙チャレンジの実施 | 健康保険組合、健康管理部門 |
| 産業医・保健師の相談 | 禁煙の進め方や受診先についての相談 | 健康管理室、産業保健スタッフ |
| 職場環境の整備 | 就業時間中の禁煙ルール、喫煙所の縮小・廃止など | 社内規程、社内掲示 |
こうした支援には、受診前の申し込みが必要だったり、治療の修了が条件になっていたりすることがあります。社内ポータルや健康保険組合のウェブサイト、配布物などを確認し、わからない場合は担当部署に問い合わせてみましょう。助成・補助制度の全体像は禁煙治療の費用助成・補助制度とは?で解説しています。
職場の禁煙ルールを知っておく
2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、事務所などの多くの施設は原則屋内禁煙となりました。会社によっては、就業時間中は敷地内外を問わず禁煙とするなど、独自のルールを設けている場合もあります。ルールの変更をきっかけに禁煙を考えるのもよいタイミングです。
仕事と両立しやすい禁煙外来の選び方
保険適用の禁煙治療は、一般に12週間で計5回の診察を行うのが標準的な流れです。仕事をしながら通い切るためには、通いやすさを重視して医療機関を選ぶことが大切です。
通院先を選ぶときのチェックポイント
- 場所:職場の近くなら昼休み、自宅の近くなら休日や仕事帰りに通いやすい
- 診療時間:夜間や土曜日に診療しているか
- 予約:予約制で待ち時間を短くできるか
- オンライン診療:2回目以降の診察などにオンライン診療を利用できるか
- 保険適用:保険診療の禁煙治療に対応しているか
保険適用の条件を満たしているかは、保険適用セルフチェックで事前に確認できます。医療機関の選び方は禁煙外来の選び方、オンライン診療については禁煙のオンライン診療とは?で詳しく解説しています。職場や自宅の近くの医療機関は全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。
勤務形態別の注意点
| 勤務形態 | 気をつけたいこと |
|---|---|
| デスクワーク中心 | 座りっぱなしで口寂しさを感じやすい。こまめに席を立つ習慣を |
| 外回り・営業職 | 移動中や車内で吸う習慣がある場合は、車内に灰皿を置かない、飲み物を用意するなどの工夫を |
| 車の運転が多い仕事 | 禁煙補助薬の飲み薬には運転に関する注意があるため、仕事内容を医師に必ず伝える |
| 夜勤・交代勤務 | 生活リズムが不規則で欲求が強まりやすい。服薬のタイミングなども医師に相談を |
| テレワーク | 人目がなく吸いやすい環境になりがち。自宅のタバコや灰皿を処分しておく |
禁煙開始日の決め方と職場での準備リスト
職場での禁煙をスムーズに始めるために、次のような準備をしておきましょう。
- 禁煙開始日を決める:繁忙期や大きな締め切りの直前は避け、比較的落ち着いた時期を選ぶ
- 職場のタバコ関連グッズを片付ける:引き出しやかばんのタバコ、ライター、加熱式タバコの機器などを持ち込まない
- 休憩時間の代替行動を決める:上の表を参考に、タイミングごとにやることを決めておく
- 伝える相手を決める:協力してほしい同僚や上司に伝えておく
- 支援制度を確認する:会社・健康保険組合の補助やプログラムを調べ、必要なら申し込む
- 通院のスケジュールを立てる:禁煙外来に通う場合は、通院日を手帳に書き込んでおく
禁煙開始から1か月の職場での過ごし方の目安
禁煙を始めてからしばらくは、吸いたい気持ちの強さや体調が日によって変わります。時期ごとの目安を知っておくと、職場での過ごし方を前もって調整しやすくなります。症状の現れ方には個人差があります。
| 時期の目安 | 起こりやすいこと | 職場での過ごし方のポイント |
|---|---|---|
| 開始〜3日目 | 吸いたい気持ちやイライラが強く出やすいとされる時期 | 大事な会議や交渉はできれば避け、休憩をこまめにとる。喫煙所の近くには行かない |
| 1週目 | 集中しにくい、眠気を感じるなどの変化が出ることも | 難しい作業は午前中など集中しやすい時間に回す。ミスを防ぐためにメモやチェックを丁寧に |
| 2〜3週目 | 欲求は少しずつ落ち着く一方、ふとしたきっかけで吸いたくなることがある | 飲み会や出張など、いつもと違う場面の前に対策を決めておく |
| 1か月前後 | 禁煙の習慣が少しずつ身についてくる | 「1本だけなら」という気のゆるみに注意。続けられている自分をほめる |
離脱症状が強く仕事に影響しそうなときは、我慢を続けるだけでなく、禁煙外来の医師に相談してみましょう。禁煙補助薬の使い方などについてアドバイスを受けられることがあります。
職場での禁煙に関するよくある質問
飲み会でつい吸ってしまいそうで不安です。
お酒を飲むと吸いたい気持ちが強まりやすいとされています。禁煙を始めてしばらくは、飲み会の参加を控えめにする、喫煙者の近くの席を避ける、一次会で切り上げるなどの工夫を考えてみましょう。
禁煙外来の通院で仕事を休まないといけませんか?
夜間や土曜日に診療している医療機関や、オンライン診療を活用すれば、仕事を休まずに通える場合もあります。初診時に、通院のスケジュールについて相談してみるとよいでしょう。
職場で1本吸ってしまいました。もう失敗でしょうか?
1本吸ってしまっても、そこで禁煙をあきらめる必要はありません。なぜ吸ってしまったのか、そのときの状況を振り返り、次の対策を考えることが大切です。禁煙外来に通っている場合は、正直に医師に伝えて相談しましょう。
まとめ
職場での禁煙は、休憩時間の習慣や喫煙所での人付き合い、仕事のストレスなどが重なるため、事前の準備が欠かせません。喫煙所に行かない休憩の過ごし方を決め、協力してほしい人に伝え、会社や健康保険組合の支援制度を確認しておくことで、禁煙を続けやすい環境を整えられます。
仕事と両立できる通院先を選べば、禁煙外来のサポートを受けながら取り組むこともできます。自分の働き方に合った方法で、無理なく禁煙を始めてみましょう。
この記事のポイント
- 職場での禁煙は、休憩時間・人付き合い・ストレスへの対策がポイント
- 喫煙のタイミングごとに、代わりにやる行動をあらかじめ決めておく
- 同僚や上司には相手を否定せず、関係を続けたい気持ちとともに伝える
- 会社や健康保険組合の禁煙支援は内容・条件がさまざまなので事前に確認する
- 夜間・土曜診療やオンライン診療を活用すれば、仕事と通院を両立しやすい
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。