「禁煙は順調だったのに、飲み会で1本もらってしまった」「お酒を飲むと、どうしてもタバコが欲しくなる」。禁煙中の方にとって、お酒の席は大きな難所のひとつです。飲酒は、禁煙中にタバコを再び吸ってしまうきっかけとして多い場面だといわれています。
とはいえ、仕事や友人との付き合いがあり、飲み会をすべて断るのは現実的ではないという方も多いでしょう。この記事では、お酒で吸いたくなる理由を整理したうえで、禁煙開始からの時期別の付き合い方、飲み会の場面別の対策、席の選び方、タバコを勧められたときの断り方の例文まで、具体的に紹介します。
なぜお酒を飲むとタバコが吸いたくなるのか
飲酒の場面で吸いたくなる理由は、ひとつではありません。主な理由を知っておくと、どこに対策をすればよいかが見えてきます。
判断がゆるみ「1本くらい」と思いやすい
お酒を飲むと気持ちが大きくなり、普段なら我慢できる場面でも「今日くらいはいいか」「1本だけなら大丈夫」と判断が甘くなりがちです。禁煙中の決意は、しらふのときに立てたものだということを覚えておきましょう。
「お酒とタバコ」がセットの習慣になっている
喫煙していたころに、お酒を飲みながらタバコを吸うことが習慣になっていた方は、お酒を口にしただけで反射的にタバコが欲しくなることがあります。体からニコチンが抜けたあとでも、こうした場面と結びついた欲求は残りやすいといわれています。
周りに喫煙者がいる・タバコを勧められる
飲み会では、周りの人が吸っていたり、「1本どう?」と気軽に勧められたりすることがあります。においや煙、吸っている姿が、吸いたい気持ちを強めるきっかけになります。
健康面でも「お酒とタバコ」の組み合わせには注意
飲酒と喫煙が重なると、口や喉、食道などのがんのリスクがより高まることが知られています。禁煙を機に、お酒の量や飲み方を見直すのもひとつの考え方です。
禁煙開始からの時期別|お酒との付き合い方の目安
禁煙を始めてからの時期によって、飲み会の「危険度」は変わります。あくまで一般的な目安ですが、時期ごとの付き合い方を表にまとめました。
| 時期 | この時期の状態 | 飲み会との付き合い方の目安 |
|---|---|---|
| 禁煙開始〜2週間ごろ | 離脱症状が出やすく、吸いたい気持ちが強い時期 | できれば飲み会は控える。予定がある場合は禁煙開始日をずらすことも検討 |
| 2週間〜1か月ごろ | 体の症状は落ち着き始めるが、場面による欲求は残りやすい | 参加する場合は短時間・少量にし、席・量・帰る時間などの対策を事前に決めておく |
| 1〜3か月ごろ | 吸わない生活に慣れてくるが、油断しやすい | 「もう大丈夫」と思ったときこそ注意。二次会や喫煙可の店は避ける |
| 3か月以降 | 吸いたい気持ちは減ってくることが多い | 久しぶりの飲み会や、喫煙者が多い集まりでは急に欲求が来ることもあると心得ておく |
禁煙開始日を決めるときは、歓送迎会や忘年会、旅行などお酒を飲む予定が多い時期の直前を避けると、最初の数週間を乗り切りやすくなります。
飲み会の前にしておきたい準備チェックリスト
飲み会での失敗の多くは、その場の勢いで起こります。参加すると決めたら、出かける前に次の項目を確認しておきましょう。
- □ タバコ、ライター、加熱式タバコの機器を持って行かない
- □ 今日飲む量(「2杯まで」など)と帰る時間を決めた
- □ 一緒に参加する人の中で、禁煙中と伝えておける人がいる
- □ 店が禁煙かどうか確認した(幹事なら禁煙の店を提案する)
- □ タバコを勧められたときの断り方を決めた
- □ 吸いたくなったときに口にできるガムや、席を立つ理由を用意した
- □ 二次会に行くかどうかを、飲む前に決めた
- □ 空腹で飲み始めないよう、軽く食べておいた
【場面別】飲み会で吸いたくなったときの乗り切り方
飲み会の中でも、吸いたくなりやすいタイミングがあります。よくある場面と対策を表にまとめました。
| 場面 | 吸いたくなる理由 | 乗り切り方の例 |
|---|---|---|
| 乾杯直後・1杯目 | 「お酒=タバコ」の習慣が呼び起こされる | 最初の1杯と一緒に水やお茶も頼む。料理を先に取り分けて手と口を動かす |
| 2杯目以降で酔いが回ってきたとき | 判断がゆるみ「1本くらい」と思いやすい | お酒と同じ量の水(チェイサー)を交互に飲む。ノンアルコール飲料に切り替える |
| 喫煙者が席を立って吸いに行くとき | 一緒に行く流れになりやすい | その間にお手洗いに行く、ほかの人と話す。喫煙所にはついて行かない |
| 隣の人が吸い始めたとき | においや煙で欲求が強まる | 席を替えてもらう、少し外の空気を吸いに出る |
| 会話が途切れて手持ち無沙汰なとき | 以前はタバコで間を持たせていた | グラスやおしぼりを持つ、料理を取る、自分から話題を振る |
| 二次会・カラオケ・バー | 酔いが深く、喫煙できる場所が多い | 禁煙初期は一次会で帰ると決めておく。「明日早いので」と先に伝える |
| 帰り道・駅までの道 | 開放感とコンビニの近さで買ってしまう | タバコを売っている店に寄らない。誰かと一緒に帰る |
| 宅飲み・一人飲み | 止める人がいない、くつろいで気がゆるむ | 家にタバコを置かない。飲む量をあらかじめ決めて買う |
吸いたい気持ちの波は、多くの場合数分ほどでピークを越えるといわれています。その数分間を、水を飲む、席を立つ、深呼吸するなどでやり過ごすことが基本です。吸いたくなったときの対処法全般については、タバコを吸いたくなったときの対処法もあわせてご覧ください。
席の選び方とお店選びのコツ
飲み会では、どこに座るかで吸いたくなる度合いが大きく変わります。
- 喫煙者の隣・正面を避ける:においや吸う姿が目に入りにくい席を選ぶ。禁煙中と知っている人の隣に座るのも安心
- 喫煙所や喫煙ブースから遠い席を選ぶ:喫煙者が出入りする場所の近くは、誘われやすく煙も流れてきやすい
- 出入り口に近い席を選ぶ:吸いたくなったときに、さりげなく外の空気を吸いに出やすい
- 幹事なら禁煙の店を選ぶ:改正健康増進法により、飲食店は原則として屋内禁煙となっていますが、一部の小規模な店などでは喫煙が認められている場合もあります。店の入り口にある喫煙に関する標識やお店の情報で確認しましょう
タバコを勧められたときの断り方の例文
タバコを勧められたとき、とっさに断りの言葉が出てこないと、つい受け取ってしまうことがあります。あらかじめ自分に合うフレーズを決めておくと、迷わずに済みます。
シンプルに伝える
- 「ありがとうございます。今、禁煙中なんです」
- 「やめたので大丈夫です」
上司や先輩に勧められたとき
- 「お気遣いありがとうございます。実は禁煙外来に通っていて、今は吸わないようにしているんです」
- 「医師と相談しながら禁煙しているところなので、今日は遠慮しておきます」
「治療中」と伝えると、相手も無理に勧めにくくなります。
「1本くらいいいじゃん」と言われたとき
- 「その1本で今までの努力が戻っちゃうので、やめておきます」
- 「1本吸うと止まらなくなるタイプなんです」
冗談めかして伝える
- 「浮いたタバコ代で、今度何かおごりますね」
- 「今、禁煙記録を更新中なので邪魔しないでください(笑)」
断るときは、理由を長く説明する必要はありません。はっきりと、でも感じよく伝えることがポイントです。
禁煙補助薬を使っている間の飲酒は医師に確認を
禁煙外来で禁煙補助薬を処方されている方は、飲酒について事前に医師に確認しておきましょう。
たとえば、飲み薬のバレニクリンについては、服用中の飲酒によって酔いやすくなったり、普段と違う行動をとったりしたという報告があります。また、めまいや眠気、まれに意識障害が報告されているため、服用中は自動車の運転などを控えるよう注意喚起されています。飲酒後はもちろん、服用中は運転しないようにしてください。薬の詳しい注意点は禁煙の飲み薬バレニクリンの飲み方・副作用で解説しています。
ニコチンパッチなどほかの禁煙補助薬を使っている場合も、飲酒量や体調の変化が気になるときは医師や薬剤師に相談しましょう。薬の効き方や副作用の出方には個人差があるため、自己判断で薬の量やタイミングを変えるのは避けてください。
もし飲み会で吸ってしまったら
飲み会で1本吸ってしまっても、そこで禁煙が終わるわけではありません。大切なのは、「もうダメだ」と投げ出さず、翌日から禁煙を再開することです。
- 残ったタバコはその日のうちに処分する
- どの場面で、何杯目くらいで吸ったのかを振り返り、メモしておく
- 次の飲み会では、その場面に向けた対策を準備する
- 禁煙治療中であれば、次の受診時に医師に伝えて相談する
吸ってしまったあとの立て直し方は、禁煙治療中に吸ってしまったら?で詳しく紹介しています。
禁煙中のお酒Q&A
Q. ノンアルコール飲料なら安心ですか?
A. アルコールによる判断のゆるみは避けられますが、飲み会の雰囲気や「乾杯して飲む」という動作そのものが、吸いたい気持ちを呼び起こすこともあります。ノンアルコールでも油断せず、席の選び方や断り方の準備はしておきましょう。
Q. 禁煙中は、お酒も完全にやめたほうがいいですか?
A. 禁煙の進め方は人それぞれですが、少なくとも禁煙を始めて最初の数週間は、飲酒の機会を減らすほうが取り組みやすいといわれています。お酒をやめるのが難しい場合は、量と時間を決める、家にタバコを置かないなど、自分にできる対策を組み合わせましょう。飲酒量が多く、自分で減らすのが難しいと感じる場合は、医師に相談してください。
Q. 職場の飲み会を断りたいとき、どう伝えればいいですか?
A. 「今月は体調管理を優先していて」「治療中なので、しばらくお酒の席は控えています」など、詳しい理由まで説明しなくても伝わる言い方を用意しておくと便利です。すべて断るのが難しい場合は、「一次会だけ参加します」「最初の1時間だけ」と、参加の仕方を調整する方法もあります。
Q. 飲み会のときだけ加熱式タバコを吸うのはどうですか?
A. 加熱式タバコにもニコチンが含まれているため、ニコチンへの依存が続き、紙巻きタバコに戻るきっかけになることもあります。禁煙中は加熱式タバコも含めて吸わないようにしましょう。
まとめ
お酒を飲むと判断がゆるみ、習慣や周りの喫煙者の影響もあって、禁煙中にタバコを吸ってしまうきっかけになりやすくなります。特に禁煙を始めて最初の数週間は、飲み会を控えるか、参加する場合も量・時間・帰るタイミングを事前に決めておくことが大切です。
喫煙者から離れた席を選ぶ、水やノンアルコール飲料を交互に飲む、断り方のフレーズを用意しておくなど、具体的な対策を準備しておけば、飲み会も乗り切りやすくなります。一人での対策に限界を感じたら、禁煙外来で医師に相談してみるのもひとつの方法です。お近くの医療機関は、全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。
この記事のポイント
- 飲酒は判断のゆるみや習慣、周りの喫煙者の影響で、再喫煙のきっかけになりやすい
- 禁煙開始から数週間は飲み会を控えるか、量・時間・二次会の有無を事前に決める
- 喫煙者や喫煙所から離れた席を選び、水やノンアルコール飲料を交互に飲む
- 勧められたときの断り方を決めておくと、その場で迷わずに済む
- 禁煙補助薬を服用中の飲酒については、事前に医師に確認する
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。