「禁煙を始めてから、なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「昼間に眠くて仕事に集中できない」。禁煙中に睡眠の変化を感じる方は少なくありません。眠れない日が続くと、つらさから「やっぱり吸ってしまおうか」と気持ちが揺らぐこともあるでしょう。
禁煙中の睡眠の変化には、ニコチン離脱症状、禁煙補助薬の副作用、カフェインの影響など、いくつかの原因が考えられます。原因によって対処法も変わります。この記事では、禁煙と睡眠の関係を整理したうえで、症状別の対処法、今夜から見直せる睡眠のチェックリスト、医師に相談したほうがよい目安を紹介します。
禁煙で睡眠が変わるのはなぜ?
ニコチン離脱症状による不眠・眠気
ニコチンには、脳を覚醒させる作用があると考えられています。毎日タバコを吸っていた体は、ニコチンがある状態に慣れているため、禁煙して体内のニコチンが減ると、心身のバランスが一時的に崩れます。その結果、寝つきが悪くなる、夜中に目が覚める、眠りが浅く感じるといった変化があらわれることがあります。
一方で、日中は眠気やだるさ、集中力の低下を感じることもあります。夜にしっかり眠れないことに加え、ニコチンによる覚醒作用がなくなることも関係していると考えられます。
こうした離脱症状は、一般に禁煙後2〜3日がピークで、多くは2〜4週間程度で軽快していくといわれています。睡眠の変化も、時間とともに落ち着いていくことが多いため、「ずっと続くわけではない」と知っておくだけでも気持ちが楽になります。離脱症状全体の経過については、ニコチン離脱症状はいつまで続く?をご覧ください。
禁煙補助薬の副作用
禁煙外来で使われる禁煙補助薬でも、睡眠に関する副作用が報告されています。
- バレニクリン(飲み薬):不眠、夢を多く見る、鮮明な夢や悪夢を見る(異常な夢)などが報告されています。詳しくは禁煙の飲み薬バレニクリンの飲み方・副作用をご覧ください
- ニコチンパッチ(貼り薬):寝ている間もニコチンが吸収されることで、寝つきが悪くなったり、夢を多く見たりすることがあります。詳しくはニコチンパッチの効果と使い方をご覧ください
薬の副作用なのか、禁煙による離脱症状なのかを自分で見分けるのは難しいものです。気になる症状がある場合は、自己判断で薬をやめたり量や時間を変えたりせず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。服用や貼るタイミングを調整することで、症状が和らぐ場合もあります。
カフェインの作用を強く感じやすくなる
見落とされがちなのが、カフェインの影響です。タバコの煙に含まれる成分には、体内でカフェインの分解を速める働きがあると考えられています。そのため、禁煙すると、以前と同じ量のコーヒーを飲んでいても、カフェインの作用が強く出やすくなる可能性があります。
喫煙していたころは平気だった夕方のコーヒーが、禁煙後は寝つきの悪さやそわそわ感につながっている、ということもあり得ます。吸いたい気持ちをまぎらわせるためにコーヒーの量が増えている場合は、特に注意が必要です。
カフェインはコーヒー以外の飲み物にも含まれています。禁煙中に見直したい飲み物の例を整理しました。含まれる量は製品やいれ方によって異なるため、気になる方は商品の表示を確認してください。
| 飲み物の例 | カフェイン | 禁煙中の付き合い方の例 |
|---|---|---|
| コーヒー | 含まれる | 飲むのは午前中から昼過ぎまでにする。杯数を禁煙前より減らしてみる |
| 緑茶・紅茶・ウーロン茶 | 含まれる | 夕方以降は麦茶やカフェインレスの製品などに替える |
| エナジードリンク・一部の炭酸飲料 | 含まれる製品がある | 眠気覚ましに頼りすぎない。特に夜は避ける |
| 麦茶・白湯・ハーブティー | 一般に含まれない | 夜の飲み物や、吸いたくなったときの水分補給に向いている |
【症状別】考えられる原因と対処法
睡眠の悩みは人によってさまざまです。症状ごとに、考えられる原因と対処法の例をまとめました。
| 症状 | 考えられる主な原因 | 対処法の例 |
|---|---|---|
| 寝つけない | 離脱症状、カフェインのとりすぎ、寝る前の「一服」の習慣がなくなった | 午後以降のカフェインを控える。寝る前の一服の代わりに、ぬるめの入浴やストレッチなど新しい習慣をつくる |
| 夜中に目が覚める | 離脱症状、寝酒、薬の影響 | 寝る前の飲酒を控える。目が覚めても時計を見ない。続く場合は医師に相談 |
| 夢が増えた・鮮明な夢を見る | 禁煙補助薬の副作用、禁煙による変化 | 処方医に伝え、服用や貼るタイミングを相談する。自己判断で中止しない |
| 日中に眠い・だるい | 離脱症状、夜の睡眠不足 | 朝に日光を浴びる。短時間の昼寝や軽い運動を取り入れる。運転や危険な作業に注意 |
| 朝起きられない | 夜の寝つきの悪さ、起床時の「目覚めの一服」がなくなった | 起床時間を毎日そろえる。起きたらカーテンを開け、水を1杯飲む |
| 寝る前にタバコが欲しくなる | 就寝前の一服が習慣になっていた | 歯を磨く、ハーブティーなどノンカフェインの温かい飲み物を飲む、深呼吸をする |
今夜から見直せる睡眠のチェックリスト
禁煙中は、睡眠を整える生活習慣(睡眠衛生)を意識することで、眠りの変化を和らげやすくなります。当てはまらない項目があれば、できるところから取り入れてみましょう。
朝・日中
- □ 毎日だいたい同じ時間に起きている(休日も大きくずらさない)
- □ 起きたらカーテンを開けて、朝の光を浴びている
- □ 日中に散歩やストレッチなど、体を動かす時間がある
- □ 昼寝をする場合は、短時間(20〜30分程度まで)にしている
夕方・夜
- □ コーヒーや緑茶、エナジードリンクなどカフェインを含む飲み物は、夕方以降は控えている
- □ 寝る前のお酒(寝酒)に頼っていない
- □ 夕食は寝る直前ではなく、少し時間をあけてとっている
- □ 寝る1〜2時間前に、ぬるめのお風呂に入るなどしてリラックスしている
寝る前・寝床
- □ 寝る直前までスマートフォンやパソコンの画面を見ていない
- □ 寝室は暗く、静かで、快適な温度に保っている
- □ 眠れないときは無理に布団の中で粘らず、いったん起きて静かに過ごしている
- □ 寝床でタバコのことを考えないよう、寝る前の新しい習慣(読書、深呼吸など)を決めている
「寝る前の一服」をどう置き換えるか
寝る前に1本吸うことが習慣になっていた方は、その時間がぽっかりと空いてしまい、落ち着かなさや眠れなさにつながることがあります。「寝る前の儀式」を新しくつくるのがおすすめです。
- 歯を磨く:口の中がさっぱりすると、吸いたい気持ちが薄れやすいといわれています
- 温かいノンカフェインの飲み物を飲む:白湯やハーブティー、麦茶など。カップを手に持つことで手持ち無沙汰も和らぎます
- ゆっくりした呼吸:鼻から4秒ほどかけて吸い、口から6〜8秒ほどかけて吐く呼吸を数回繰り返します。タバコを吸うときの「深く吸って吐く」動作の置き換えにもなります
- 軽いストレッチ:首や肩、背中をゆっくり伸ばします。激しい運動は寝る直前には避けましょう
- 翌日の予定や気になることをメモに書き出す:頭の中を整理すると、考えごとで眠れないのを防ぎやすくなります
寝酒に頼るのは避けたい理由
眠れないからといってお酒に頼ると、かえって睡眠の質が下がることがあります。アルコールは寝つきをよくするように感じられても、夜中に目が覚めやすくなったり、眠りが浅くなったりすることが知られています。
さらに、お酒を飲むと気がゆるみ、「1本だけ」と吸ってしまうきっかけにもなりがちです。禁煙中のお酒との付き合い方については、禁煙中の飲み会・お酒との付き合い方も参考にしてください。
日中の眠気への対策と注意点
禁煙を始めてしばらくは、日中に眠気やだるさを感じることがあります。次のような工夫を取り入れてみましょう。
- 禁煙開始直後の数日は、重要な会議や細かい作業をなるべく入れないようにスケジュールを調整する
- 1時間に1回程度は席を立ち、軽く体を動かす
- 冷たい水で顔を洗う、外の空気を吸うなど、気分を切り替える
- 眠気が強いときは、短時間の仮眠をとる
眠気が強いときは、車の運転や危険を伴う機械の操作は避けてください。特にバレニクリンを服用中の方は、めまいや眠気、まれに意識障害が報告されているため、服用中は自動車の運転などに従事しないよう注意喚起されています。
医師に相談したほうがよい目安
禁煙中の睡眠の変化は一時的なことが多いものの、次のような場合は我慢せず、禁煙外来の医師やかかりつけ医に相談しましょう。
- 数週間たっても眠れない状態が改善しない、または悪化している
- 眠れないことで、仕事や家事など日常生活に大きな支障が出ている
- 悪夢が続いてつらい、夢と現実の区別がつきにくいと感じる
- 気分の落ち込みが続く、不安が強い、普段と違う考えや行動があらわれる
- 大きないびきや、寝ている間に呼吸が止まっていると家族に指摘された
- 日中に、会議中や運転中など本来眠るはずのない場面で眠り込んでしまう
禁煙補助薬を使っている間に気分の落ち込みや普段と違う言動などの変化があらわれた場合は、服用を中止して速やかに処方医に連絡してください。また、睡眠薬などを自己判断で使うことは避け、必要な場合は医師に相談しましょう。
禁煙と睡眠のQ&A
Q. 眠れないのがつらいので、禁煙をいったん延期すべきですか?
A. 睡眠の変化は多くの場合、時間とともに落ち着いていくといわれています。すぐに延期を決める前に、カフェインや寝る前の習慣を見直してみましょう。禁煙外来に通っている場合は、次の受診を待たずに医療機関に相談するのもひとつの方法です。
Q. 禁煙すると、睡眠はよくなるのですか?
A. 禁煙直後は一時的に睡眠が乱れることがありますが、体がニコチンのない状態に慣れてくると、落ち着いていくことが多いといわれています。睡眠中にニコチンが切れて目が覚めるといった喫煙に関連する影響もなくなるため、長い目で見れば睡眠にとってもよい変化が期待できます。
Q. 禁煙補助薬を夜に使わないようにしてもいいですか?
A. 自己判断で使い方を変えるのは避けてください。薬の種類によって服用や貼るタイミングの考え方が異なるため、睡眠への影響が気になる場合は、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。
まとめ
禁煙を始めてから眠れない、または日中に眠いと感じるのは、ニコチン離脱症状による一時的な変化であることが多く、一般に数週間ほどで落ち着いていくといわれています。ただし、禁煙補助薬の副作用や、禁煙後にカフェインの作用を強く感じやすくなることが関係している場合もあります。
午後以降のカフェインを控える、寝酒を避ける、寝る前の一服を新しい習慣に置き換えるなど、生活習慣を見直すことで眠りを整えやすくなります。症状が続く場合やつらい場合は、我慢せず医師に相談してください。お近くの医療機関は、全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。
この記事のポイント
- 禁煙中の不眠や日中の眠気は、ニコチン離脱症状として起こることがある
- 離脱症状は一般に2〜3日がピーク、多くは2〜4週間程度で軽快するといわれる
- バレニクリンやニコチンパッチでは、不眠や夢の変化が報告されている。使い方は自己判断で変えない
- 禁煙後はカフェインの作用を強く感じやすくなる可能性があり、午後以降は控えめに
- 数週間たっても改善しない、気分の落ち込みがあるなどの場合は医師に相談を
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。