「禁煙したいけれど、イライラや吸いたい気持ちを我慢できる自信がない」「ニコチンパッチがよいと聞いたけれど、本当に効くのか、どう使えばいいのかわからない」。禁煙を考えたとき、貼り薬のニコチンパッチが気になっている方もいるのではないでしょうか。ドラッグストアで見かけたものの、病院で処方されるものとの違いがわからず、手が出せずにいる方もいるかもしれません。
ニコチンパッチは、禁煙中の離脱症状をやわらげるために使われる禁煙補助薬のひとつです。正しく使えば禁煙の心強い味方になりますが、副作用や使い方の注意点もあります。
この記事では、ニコチンパッチの仕組みと効果の考え方、医療機関で処方されるものと市販品の違い、貼る場所や使い方のコツ、副作用と注意点をわかりやすく解説します。
ニコチンパッチとは?禁煙を助ける仕組み
ニコチンパッチは、皮膚に貼ることでニコチンを少しずつ体内に取り込み、禁煙中の離脱症状をやわらげる貼り薬です。このように、タバコ以外の形でニコチンを補いながら禁煙を進める方法を「ニコチン置換療法」といいます。
タバコを吸うと、ニコチンは短時間で脳に届き、血液中の濃度が急に上がります。これに対してニコチンパッチは、皮膚からゆっくりとニコチンを吸収させるため、急激な濃度の上昇が起こりにくいのが特徴です。一定量のニコチンを補うことで、イライラ、落ち着かなさ、集中力の低下、強い喫煙欲求といった離脱症状をやわらげます。
そのうえで、数週間ごとにパッチのサイズ(ニコチンの量)を段階的に小さくしていき、最終的にはニコチンを使わない状態を目指します。タバコに含まれるタールや一酸化炭素などは含まれないため、喫煙を続けるのとは異なり、ニコチンの量を計画的に減らしていける点がポイントです。
ニコチンパッチの効果の考え方
ニコチン置換療法は、国内外で禁煙の補助として広く用いられており、何も使わずに禁煙するよりも禁煙を続けやすくなることが示されています。ただし、パッチを貼るだけで誰もが禁煙できるわけではありません。効果のあらわれ方には個人差があり、吸いたくなる場面での行動の工夫や、医師・薬剤師のサポートと組み合わせることが大切です。離脱症状の乗り越え方は禁煙の離脱症状と対処法も参考にしてください。
処方薬と市販品の違い
ニコチンパッチには、医療機関で処方されるもの(医療用医薬品)と、薬局やドラッグストアで購入できるもの(市販品)があります。一般的な違いは次のとおりです。
| 項目 | 処方薬(医療用) | 市販品 |
|---|---|---|
| 入手方法 | 医療機関で医師が処方 | 薬局・ドラッグストアで薬剤師の説明を受けて購入 |
| 医薬品の区分 | 医療用医薬品 | 要指導医薬品または第1類医薬品に区分されるもの |
| ニコチン量の規格 | 一般に、市販品より多い規格を選べる | 処方薬に比べると少なめの規格が中心 |
| 保険適用 | 条件を満たせば保険適用の禁煙治療で使える | 対象外(全額自己負担) |
| サポート | 医師による定期的な診察とフォロー | 購入時の薬剤師による説明・相談が中心 |
| 向いている人の例 | 喫煙本数が多い、持病がある、医師のフォローを受けたい | 通院の時間がとりにくい、まずは自分で取り組みたい |
市販品は手軽に購入できる一方、自分で使い方を管理する必要があります。また、製品によって、24時間貼り続けるタイプと、朝貼って寝る前にはがすタイプがあるなど、使い方が異なります。購入時には薬剤師の説明をよく聞き、添付文書を確認してから使いましょう。
処方薬を使う場合は、保険適用の禁煙治療の中で医師が規格や使用期間を決め、体調を確認しながら進めます。喫煙本数が多い方や持病がある方は、医療機関で相談するほうが安心です。費用の目安は禁煙外来の費用はいくら?で紹介しています。
ニコチンパッチの使い方
使用開始日から禁煙する
ニコチンパッチは、貼り始めた日から禁煙を開始するのが基本です。飲み薬のように「服用開始後しばらくは吸ってもよい」という準備期間はないため、使い始める前に灰皿やライター、残っているタバコを片づけておきましょう。
1日1回、決まった時間に貼る
1日1回、毎日同じくらいの時間に新しいパッチに貼り替えるのが一般的です。朝起きたときなど、習慣にしやすいタイミングを決めておくと貼り忘れを防げます。貼り替えるときは、古いパッチをはがしてから新しいものを貼ります。
段階的にサイズを小さくする
使用期間中は、数週間ごとにニコチン量の少ないパッチに切り替えていきます。全体の使用期間や切り替えのタイミングは、処方薬の場合は医師の指示に、市販品の場合は添付文書や薬剤師の説明に従ってください。自己判断で長期間使い続けることは避けましょう。
ニコチンパッチを貼る場所と貼り方のコツ
貼る場所
パッチは、上腕、腹部、背中、腰など、体毛が少なく皮膚が健康な部位に貼るのが一般的です。製品によって推奨される部位が異なる場合があるため、添付文書や医師・薬剤師の説明を確認しましょう。傷や湿疹、赤みのある部分、汗をかきやすい部分、ベルトなどでこすれやすい部分は避けます。
毎日貼る場所を変える
同じ場所に続けて貼ると、かぶれやかゆみが起こりやすくなります。毎日貼る場所を変えることが、皮膚トラブルを防ぐ基本です。たとえば「月曜は右腕、火曜は左腕」のように、ローテーションを決めておくとわかりやすいでしょう。
貼り方のコツ
- 貼る前に皮膚の汗や汚れをふき取り、よく乾かしておく
- 保湿クリームなどを塗った直後の皮膚は避ける
- 貼ったら手のひらでしばらく押さえ、しっかり密着させる
- パッチを切って使わない
- 使い終わったパッチは粘着面を内側にして折りたたみ、子どもやペットの手の届かない場所に捨てる
使用済みのパッチにもニコチンが残っているため、捨て方には注意が必要です。また、MRI検査などを受ける際には、パッチをはがすよう指示される場合があります。検査の予定があるときは、事前に医療機関に伝えておきましょう。
ニコチンパッチの主な副作用
ニコチンパッチでみられる主な副作用には、次のようなものがあります。
皮膚のかゆみ・赤み・かぶれ
最も多くみられるのが、貼った部分の皮膚のかゆみ、赤み、かぶれです。はがしたあとに軽い赤みが出る程度であれば、しばらくすると治まることが多いとされますが、強いかゆみや腫れ、水ぶくれが出た場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。貼る場所を毎日変えることで、ある程度予防できます。
不眠・夢を多く見る
寝ている間もニコチンが吸収されることで、寝つきが悪くなったり、夢を多く見たりすることがあります。症状が気になる場合は、貼るタイミングや製品の種類について医師・薬剤師に相談しましょう。自己判断で使い方を変えるのは避けてください。
そのほかの症状
頭痛、めまい、吐き気、動悸などがあらわれることもあります。ニコチンのとりすぎで起こる場合もあるため、こうした症状が続くときは早めに相談しましょう。
ニコチンパッチを使うときの注意点
喫煙しながら使わない
パッチを使用しながらタバコを吸うと、ニコチンを過剰に摂取してしまうおそれがあります。使用中は喫煙しないことが大前提です。加熱式タバコも同様にニコチンを含むため、併用は避けましょう。もし吸ってしまった場合は、自己判断で使用を続けるかやめるかを決めず、医師や薬剤師に相談してください。
ほかのニコチン製剤と自己判断で併用しない
処方薬と市販品のパッチを重ねて使ったり、ニコチンガムと自己判断で併用したりすると、ニコチンの量が多くなりすぎるおそれがあります。併用を考えている場合は、医師・薬剤師に相談しましょう。
医師・薬剤師への相談が必要な人
次のような方は、使用前に医師や薬剤師に相談してください。市販品では、使用してはいけない人が添付文書に定められている場合もあります。
- 妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方
- 心臓や血管の病気(狭心症、心筋梗塞、不整脈、脳卒中など)がある方、またはその既往がある方
- 高血圧、糖尿病、甲状腺の病気、胃潰瘍などで治療中の方
- アトピー性皮膚炎など、皮膚の病気がある方
- ほかに服用中の薬がある方
禁煙によって、服用中の薬の効き方が変わる場合もあります。持病のある方は、主治医に禁煙を始めることを伝えておきましょう。
自分に合った禁煙補助薬を選ぶために
禁煙補助薬には、ニコチンパッチのほかに、ニコチンを含まない飲み薬のバレニクリンや、市販のニコチンガムもあります。どれが合うかは、喫煙本数、生活スタイル、持病、皮膚の状態などによって異なります。各薬の特徴を比べたい方は禁煙補助薬の種類と特徴をご覧ください。
医療機関によって処方できる薬の種類は異なります。受診先を探す際は、全国の禁煙外来をエリアから探すページをご活用ください。
まとめ
ニコチンパッチは、皮膚からニコチンをゆっくり補い、禁煙中の離脱症状をやわらげる貼り薬です。数週間ごとにサイズを小さくしながら、段階的にニコチンから離れていきます。医療機関で処方されるものは条件を満たせば保険適用の禁煙治療で使え、市販品は薬剤師の説明を受けて購入できます。
貼り始めた日から禁煙し、毎日貼る場所を変えること、使用中は喫煙しないことが基本です。皮膚のかゆみ・かぶれや不眠などの副作用が気になるときや、妊娠中・心臓の病気がある場合などは、医師や薬剤師に相談しながら使いましょう。
この記事のポイント
- ニコチンパッチは皮膚からニコチンを補い、離脱症状をやわらげる「ニコチン置換療法」の貼り薬
- 処方薬は条件を満たせば保険適用、市販品は要指導医薬品または第1類医薬品として薬剤師から購入
- 貼り始めた日から禁煙し、上腕・腹部・背中などに毎日場所を変えて貼る
- 主な副作用は皮膚のかゆみ・かぶれ、不眠、夢を多く見るなど
- 使用中は喫煙しない。妊娠中や心臓・血管の病気がある方などは医師・薬剤師に相談を
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。