「禁煙外来で飲み薬を勧められたけれど、副作用が心配」「タバコを吸いながら薬を飲み始めていいと聞いて驚いた」「仕事で車を運転するけれど、大丈夫だろうか」。禁煙の飲み薬について、こうした疑問や不安を持つ方は多いのではないでしょうか。
禁煙の飲み薬として知られるバレニクリンは、ニコチンを含まない禁煙補助薬です。飲み方に独特のスケジュールがあり、副作用や生活上の注意点もあるため、事前に知っておくと安心して治療に臨めます。
この記事では、バレニクリンの仕組み、一般的な服用スケジュールと禁煙開始日の考え方、主な副作用と対処法、服用中の注意点、供給状況について解説します。なお、具体的な服用量は体の状態によって異なるため、本記事では記載していません。実際の服用は医師の指示どおりに行ってください。
バレニクリンとは?ニコチンを含まない禁煙の飲み薬
バレニクリンは、医療機関で処方される禁煙補助薬(飲み薬)です。ニコチンパッチやニコチンガムのようにニコチンを補うのではなく、ニコチンを含まずに禁煙を助けるのが特徴です。条件を満たせば、保険適用の禁煙治療で使うことができます。
2つの働きで禁煙をサポート
タバコを吸うと、ニコチンが脳の「ニコチン受容体」に結びつき、快感をもたらす物質が放出されます。これが繰り返されることで、ニコチンがないと落ち着かない状態(ニコチン依存)になります。
バレニクリンは、このニコチン受容体に結びつき、次の2つの働きをすると考えられています。
- 吸いたい気持ちをやわらげる:受容体を適度に刺激することで、禁煙中のイライラや強い喫煙欲求といった離脱症状を軽くします。
- 吸っても満足感を得にくくする:受容体にニコチンが結びつきにくくなるため、タバコを吸っても「おいしい」と感じにくくなります。
この仕組みがあるため、服用開始からしばらくはタバコを吸いながら薬を飲み、体を慣らしてから禁煙を始めるという独特の進め方になります。
バレニクリンの飲み方と12週間のスケジュール
バレニクリンの標準的な服用期間は12週間です。いきなり決まった量を飲むのではなく、少ない量から始めて段階的に増やしていくのが一般的な方法です。全体の流れは次のようになります。
| 時期 | 服用の考え方 | 喫煙 |
|---|---|---|
| 1〜3日目 | 少ない量を1日1回服用 | 吸ってもよい |
| 4〜7日目 | 少ない量を1日2回(朝・夕)服用 | 吸ってもよい |
| 8日目〜12週目 | 維持する量を1日2回(朝・夕)服用 | 8日目ごろから禁煙を開始 |
上記は一般的なスケジュールの考え方です。実際の服用量や回数は、腎臓の機能や副作用の出方などによって医師が調整します。処方された薬は医師の指示どおりに服用してください。
禁煙開始日は服用開始の約1週間後
バレニクリンの場合、禁煙を始める日の1週間前から服用を始めるのが一般的です。つまり、初診で禁煙開始日を決め、その1週間前(多くは初診当日)から薬を飲み始め、服用8日目ごろに禁煙をスタートします。
この1週間は、薬が効き始めるのを待ちながら禁煙の準備をする期間でもあります。吸いたくなる場面を書き出しておく、灰皿やライターを処分する日を決める、家族や職場に禁煙を伝えるなど、準備を進めておきましょう。服用中にタバコの味が変わったと感じる方もいます。禁煙外来の初診の流れは禁煙外来の初診の流れで詳しく紹介しています。
服用のポイント
- 食後に、コップ1杯程度の水と一緒に服用するのが一般的です。吐き気をやわらげる工夫にもなります。
- 飲み忘れたときの対応は、自己判断せず医師・薬剤師の説明に従いましょう。2回分をまとめて飲むことは避けてください。
- 禁煙が順調に進んでいるように感じても、自己判断で服用を中止せず、予定の期間について医師と相談しましょう。
- 禁煙開始後に吸ってしまっても、治療が終わりになるわけではありません。正直に医師に伝え、今後の進め方を相談しましょう。
バレニクリンの主な副作用
バレニクリンには、次のような副作用が報告されています。多くは軽度から中等度とされますが、症状の出方には個人差があります。
| 副作用 | 特徴 | 対処の例 |
|---|---|---|
| 吐き気 | 比較的多くみられる副作用。服用初期にあらわれやすいとされる | 食後に水と一緒に服用する。続く場合は医師に相談 |
| 頭痛 | 服用中にあらわれることがある | 続く場合や強い場合は医師に相談 |
| 便秘・腹部の不快感 | おなかの張りなどを伴うことも | 水分や食物繊維をとる。続く場合は医師に相談 |
| 不眠 | 寝つきが悪くなる、眠りが浅くなる | 就寝直前の服用を避けるなど、服用時間について医師に相談 |
| 異常な夢 | 夢をよく見る、鮮明な夢や悪夢を見る | 気になる場合は医師に相談 |
なお、禁煙そのものによっても、イライラや不眠、気分の落ち込みなどの離脱症状があらわれることがあります。薬の副作用か離脱症状かを自分で見分けるのは難しいため、気になる症状は医師に相談しましょう。離脱症状については禁煙の離脱症状と対処法も参考になります。
吐き気が出たときは
吐き気は、バレニクリンで比較的よくみられる副作用です。服用を続けるうちに軽くなっていく場合もありますが、つらい場合は我慢せずに医師に相談してください。症状によっては、服用量の調整などが検討されることがあります。自己判断で量を減らしたり、服用をやめたりするのは避けましょう。
服用中に特に注意したいこと
自動車の運転など危険を伴う作業
バレニクリンの服用中には、めまいや眠気、意識が遠のく、意識がなくなるといった意識障害が、まれに報告されています。そのため、服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないよう注意喚起されています。
仕事で車を運転する方や、高所作業・機械の操作などに従事する方は、初診の段階で医師に伝え、薬の選び方を相談しましょう。ニコチンパッチなど、ほかの禁煙補助薬が検討される場合もあります。
気分や行動の変化
服用中に、気分の落ち込み、不安、イライラ、攻撃的になる、行動の変化などがあらわれたという報告があります。禁煙そのものによっても気分の変化は起こりうるため、薬との関係がはっきりしない場合もありますが、普段と違う気分や行動の変化に気づいたら、服用を中止して速やかに医師に連絡してください。家族にも服用していることを伝え、様子の変化に気づいたら教えてもらうようにしておくと安心です。
うつ病などの精神疾患の治療を受けている方、過去に治療を受けたことがある方は、事前に医師に伝えておきましょう。
腎臓の機能が低下している方
バレニクリンは主に腎臓から排泄されるため、腎臓の機能が低下している方は服用量の調整が必要になる場合があります。健康診断などで腎機能の指摘を受けたことがある方は、医師に伝えてください。
飲酒について
服用中の飲酒によって、酔いやすくなったり、普段と違う行動をとったりしたという報告もあります。服用中は飲酒量に注意し、心配な場合は医師に相談しましょう。飲酒は喫煙の引き金になりやすい場面でもあるため、禁煙のためにも控えめにするのが無難です。
ニコチンパッチとの併用
バレニクリンとニコチンパッチを併用すると、吐き気や頭痛などの副作用が出やすくなるとの報告があります。自己判断で市販のニコチン製剤と併用することは避け、医師の指示に従いましょう。
バレニクリンの供給状況について
バレニクリンは、2021年に製剤から基準を超える不純物が検出されたことを受けて出荷が停止され、その後も長期にわたって供給が不安定な状態が続いた経緯があります。そのため、時期や医療機関によって、処方できるかどうかが異なる場合があります。
バレニクリンでの治療を希望する場合は、受診前に医療機関へ処方が可能かどうかを確認しておくと安心です。処方が難しい場合は、ニコチンパッチなど別の禁煙補助薬で治療を進める方法もあります。各薬の特徴は禁煙補助薬の種類と特徴で比較しています。
インターネット上には、バレニクリンと同じ成分の薬を海外から個人輸入で購入できるとうたうサイトがありますが、偽造品や品質に問題のある製品が含まれている可能性があり、推奨されません。個人輸入した医薬品による健康被害は、公的な救済制度の対象外です。バレニクリンは、医師の診察のもとで使用しましょう。
バレニクリンが向いている人・相談が必要な人
バレニクリンが検討されやすいのは、次のような方です。
- ニコチンを含まない薬で禁煙したい
- いきなり禁煙するのではなく、1週間程度の準備期間を設けたい
- 皮膚がかぶれやすく、貼り薬が使いにくい
一方、日常的に車を運転する方、腎臓の機能が低下している方、精神疾患の治療歴がある方、妊娠中・授乳中の方などは、医師と十分に相談したうえで薬を選ぶ必要があります。どの薬が合うかは人によって異なるため、医師に生活スタイルや持病をありのままに伝えましょう。
バレニクリンを処方している医療機関を探す際は、全国の禁煙外来をエリアから探すページで候補を見つけ、処方の可否を問い合わせてみてください。
まとめ
バレニクリンは、ニコチンを含まずに禁煙を助ける飲み薬です。少ない量から始めて段階的に増やし、12週間かけて服用するのが一般的で、服用開始から約1週間後に禁煙を始めます。具体的な服用量は医師の指示に従いましょう。
主な副作用には吐き気、頭痛、便秘、不眠、異常な夢などがあり、まれに意識障害が報告されているため、服用中は自動車の運転などに注意が必要です。気分や行動の変化に気づいたときは、服用を中止して速やかに医師に連絡してください。供給状況は時期によって変わるため、受診先に確認しておくと安心です。
この記事のポイント
- バレニクリンはニコチンを含まない禁煙の飲み薬で、吸いたい気持ちと吸ったときの満足感をやわらげる
- 服用期間は12週間が標準。少ない量から始め、服用開始から約1週間後に禁煙を開始するのが一般的
- 主な副作用は吐き気・頭痛・便秘・不眠・異常な夢など。服用量は医師の指示どおりに
- まれに意識障害の報告があり、服用中は自動車の運転などに注意。気分の変化があれば服用を中止し医師へ連絡
- 2021年以降に出荷停止の経緯があり、処方の可否は受診先で確認を。個人輸入は推奨されない
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。