「禁煙したいけれど、太るのが心配」「以前禁煙したときに体重が増えて、結局また吸い始めてしまった」――体重の変化は、禁煙をためらう理由としてよく挙げられる悩みのひとつです。
たしかに禁煙後は体重が増えやすい傾向がありますが、その理由を知り、食事や生活習慣を少し工夫することで、増加を緩やかにすることは十分に可能です。この記事では、禁煙で体重が増えやすい理由と、無理な食事制限に頼らずに体重をコントロールするための具体的なポイントを解説します。
禁煙すると太りやすいのはなぜ?
禁煙後に体重が増えやすいのには、いくつかの理由があります。原因がわかれば、対策も立てやすくなります。
1. 基礎代謝の変化
ニコチンには、エネルギー消費をやや高める作用があるといわれています。禁煙によってこの作用がなくなると、喫煙していた頃と同じ量を食べていても、体重が増えやすくなることがあります。
2. 食欲の回復と味覚の改善
喫煙は食欲を抑える方向に働くことがあり、禁煙すると食欲が戻ってきます。また、タバコをやめると味覚や嗅覚が回復し、食事をおいしく感じるようになるため、つい食べる量が増えがちです。これは体が本来の状態に戻りつつあるサインでもあります。
3. 口寂しさによる間食の増加
タバコを吸う動作の代わりに、何かを口に入れたくなる「口寂しさ」も体重増加の大きな要因です。離脱症状のイライラを紛らわせるために、甘いお菓子やスナック菓子に手が伸びやすくなります。離脱症状についてはニコチン離脱症状の記事で詳しく解説しています。
体重はどのくらい増える?
禁煙後の体重増加には個人差が大きく、ほとんど変わらない人もいれば、増えやすい人もいます。一般的には数kg程度の増加がみられることが多いといわれています。あらかじめ「多少は増えるかもしれない」と知っておくことで、体重計の数字に一喜一憂しすぎずに済みます。
体重増加よりも禁煙のメリットのほうが大きい
体重が増えることを心配して禁煙をためらう方もいますが、医学的には、禁煙による健康上のメリットは、禁煙後の一般的な体重増加によるデメリットを大きく上回ると考えられています。喫煙は、がん、心臓病、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、さまざまな病気のリスクを高めることが知られています。
「太るくらいなら吸い続けたほうがいい」と考えるのではなく、「禁煙しながら、体重もできるだけコントロールする」という発想で取り組みましょう。ただし、もともと糖尿病や高血圧などの持病がある方は、体重の変化が体調に影響することもあるため、医師に相談しながら進めると安心です。
禁煙しても太らないための食事のポイント
ここからは、体重増加を抑えるための食事の工夫を紹介します。極端な食事制限は長続きせず、ストレスから再喫煙につながるおそれもあるため、「無理なく続けられること」を意識しましょう。
1日3食を規則正しく食べる
食事を抜くと、次の食事でドカ食いしやすくなったり、空腹から間食が増えたりします。朝・昼・晩の3食をできるだけ決まった時間にとることが、食べすぎを防ぐ基本です。
野菜・たんぱく質を意識した食事にする
主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけましょう。特に、野菜や海藻、きのこなど食物繊維を含む食品は、満腹感を得やすく、禁煙中に起こりやすい便秘の予防にも役立ちます。肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質も、適量をしっかりとりましょう。
よく噛んで、ゆっくり食べる
早食いは食べすぎのもとです。ひと口ごとに箸を置く、噛みごたえのある食材を取り入れるなど、ゆっくり食べる工夫をすると、少ない量でも満足感を得やすくなります。
味の濃いもの・脂っこいものは控えめに
味覚が回復すると、濃い味や脂っこいものがよりおいしく感じられることがあります。揚げ物や味の濃いおかずはご飯が進みやすいため、頻度や量を意識的に控えめにしましょう。
飲み物のカロリーにも注意
口寂しさから、清涼飲料水や甘い缶コーヒーを飲む回数が増える方も少なくありません。飲み物は水やお茶、無糖の炭酸水などを基本にしましょう。また、アルコールは食欲を増進させるうえ、喫煙欲求を呼び起こしやすいため、禁煙初期は特に控えめにするのがおすすめです。
口寂しさ対策と間食の選び方
口寂しさは、禁煙中の多くの人が経験するものです。「間食をゼロにする」のではなく、「何を・どのくらい食べるか」を工夫しましょう。
| 口寂しいときの選択肢 | ポイント |
|---|---|
| 無糖のガム | 噛む動作で口寂しさを紛らわせやすい。糖分の入っていないものを選ぶ |
| 水・お茶・無糖の炭酸水 | カロリーを気にせず飲める。冷たいものは気分転換にも |
| 野菜スティック(きゅうり、にんじんなど) | 噛みごたえがあり、低カロリー |
| 素焼きナッツ(少量) | 噛みごたえがある。カロリーは高めなので、小分けにして量を決めて食べる |
| ヨーグルト(無糖)・チーズ(少量) | たんぱく質がとれ、満足感を得やすい |
| 歯みがき | 口の中がすっきりし、「食べ終わり」「吸いたい気持ちの区切り」をつけやすい |
間食は「量と時間」を決めておく
お菓子を袋ごと手元に置くと、気づかないうちに食べすぎてしまいます。食べる分だけを小皿に出す、「午後3時に1回だけ」などと時間を決めるといった工夫が効果的です。また、買い置きをしないことも、間食を減らす手軽な方法です。
太らないための生活習慣のポイント
食事だけでなく、日々の生活習慣を見直すことも体重管理には大切です。
ウォーキングなど軽い運動を取り入れる
体を動かすことは、消費エネルギーを増やすだけでなく、ストレス解消や気分転換にもつながり、吸いたい気持ちを紛らわせる効果も期待できます。いきなり激しい運動を始める必要はありません。1駅分歩く、エレベーターではなく階段を使う、昼休みに10分散歩するなど、生活の中で無理なく続けられることから始めましょう。持病がある方や運動習慣がない方は、医師に相談してから始めると安心です。
体重を毎日記録する
毎朝同じ条件で体重を量り、記録しておくと、増え始めたタイミングにすぐ気づけます。少し増えたら間食を見直すなど、早めに調整しやすくなります。
十分な睡眠をとる
睡眠不足は、食欲に関わるホルモンのバランスに影響し、食べすぎにつながりやすいといわれています。禁煙初期は寝つきが悪くなることもあるため、寝る前のカフェインやアルコールを控え、生活リズムを整えることを意識しましょう。
ストレスを食べ物以外で発散する
タバコの代わりに「食べること」でストレスを解消する習慣がつくと、体重は増えやすくなります。入浴、音楽、軽い運動、趣味の時間など、食べ物以外のリラックス方法をいくつか用意しておきましょう。
禁煙外来で体重のことも相談できる
体重増加が心配な方は、禁煙外来を受診した際に医師に相談してみましょう。禁煙外来では、禁煙補助薬で離脱症状を和らげながら禁煙を進められるため、イライラや口寂しさから間食に頼る場面を減らせる可能性があります。
禁煙外来で使われる主な禁煙補助薬には、ニコチンパッチ(貼り薬)とバレニクリン(飲み薬)があります。バレニクリンは供給状況が時期により変動しているため、処方が可能かどうかは受診先で確認してください。薬の特徴については禁煙補助薬の種類と特徴で紹介しています。
また、保険診療では12週間で5回程度の診察があり、そのたびに体調や体重の変化について相談できます。食事や運動について具体的なアドバイスを受けられるのも、医療機関で禁煙に取り組むメリットのひとつです。お近くの医療機関は全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。
体重を減らすために極端な食事制限をしたり、効果がはっきりしないサプリメントや、医師の処方によらない医薬品に頼ったりすることはおすすめできません。特に、海外から個人輸入した医薬品には健康被害のリスクがあります。体重管理に不安がある場合は、医師に相談しましょう。
禁煙と体重に関するよくある質問
体重が増えてきたら、禁煙を中断すべき?
禁煙を中断する必要はありません。まずは禁煙を続けることを優先し、体重は食事や運動で少しずつ調整していきましょう。禁煙が安定してから、本格的に体重管理に取り組むという考え方もあります。
禁煙中にダイエットも同時に始めてよい?
禁煙初期は離脱症状もあり、心身ともに負担がかかりやすい時期です。この時期に厳しいダイエットを同時に行うと、ストレスが増して再喫煙のきっかけになることもあります。まずは「今の体重を大きく増やさない」くらいの目標から始めるのが現実的です。
禁煙後の体重増加はずっと続く?
体重の増え方には個人差がありますが、禁煙後しばらくして食生活や生活リズムが落ち着いてくると、増加も落ち着いてくることが多いといわれています。食事や運動の習慣を整えておくことで、その後の体重管理もしやすくなります。
まとめ
禁煙後に体重が増えやすいのは、代謝の変化や食欲・味覚の回復、口寂しさによる間食の増加などが主な理由です。ただし、禁煙による健康上のメリットは、一般的な体重増加のデメリットを大きく上回ると考えられています。
1日3食を規則正しくとる、野菜やたんぱく質を意識する、間食の内容と量を工夫する、軽い運動を取り入れるなど、無理のない範囲の工夫を積み重ねることで、体重増加は緩やかにできます。禁煙を成功させるための考え方については禁煙に成功する人の特徴もあわせてご覧ください。体重が心配で禁煙に踏み出せない方は、禁煙外来で医師に相談しながら取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事のポイント
- 禁煙後の体重増加は、代謝の変化・食欲や味覚の回復・口寂しさなどが主な理由
- 禁煙の健康上のメリットは、一般的な体重増加のデメリットを大きく上回ると考えられている
- 1日3食を規則正しく、野菜・たんぱく質を意識し、よく噛んで食べる
- 間食は「何を・どのくらい・いつ」を決め、飲み物のカロリーにも注意
- 極端な食事制限やサプリに頼らず、不安があれば禁煙外来で相談を
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。