「禁煙外来に行ってみたいけれど、自分は保険が使えるのだろうか」「条件を満たしていなかったら、全額自己負担になってしまうのでは」。禁煙外来を検討するとき、費用とあわせて気になるのが保険適用の条件です。せっかく予約して受診したのに対象外だった、という事態は避けたいものですよね。
禁煙外来の治療は、国が定めた条件を満たすと健康保険が適用され、自己負担を抑えて受けることができます。条件自体はそれほど複雑ではなく、受診前にある程度セルフチェックすることも可能です。
この記事では、禁煙外来で保険が適用される4つの条件、ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)とブリンクマン指数の考え方、前回の治療から1年が経過しているかどうかのルール、条件を満たさない場合の選択肢まで、順を追って解説します。
禁煙外来で保険が適用される4つの条件
保険適用で禁煙治療(ニコチン依存症管理)を受けるためには、患者側が次の4つの条件をすべて満たしている必要があります。
| 条件 | 内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 1. ニコチン依存症の判定 | ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で5点以上 | 受診時の問診票で回答 |
| 2. ブリンクマン指数 | 35歳以上の場合、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上 | 問診で喫煙本数と年数を確認 |
| 3. 禁煙の意思 | ただちに禁煙することを希望している | 医師の診察で確認 |
| 4. 文書による同意 | 禁煙治療の説明を受け、治療を受けることに文書で同意する | 同意書への署名 |
このほか、過去に保険適用の禁煙治療を受けたことがある人は「前回の治療の初回診察日から1年以上経過していること」が求められます。また、医療機関側が保険で禁煙治療を行うための施設基準を満たし、届け出ていることも前提となります。
禁煙外来の全体像を先に知りたい方は、禁煙外来とは?受診の条件・治療の流れもあわせてご覧ください。以下、それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。
条件1:ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)とは?
TDS(Tobacco Dependence Screener)は、ニコチン依存症かどうかを判定するために使われる10項目の質問票です。WHOの診断基準などをもとに作られたもので、禁煙外来の初診時に問診票として記入するのが一般的です。
TDSの考え方と判定基準
TDSでは、10個の質問それぞれに「はい」か「いいえ」で答え、「はい」を1点、「いいえ」を0点として合計点を出します。合計が5点以上の場合、ニコチン依存症と判定されます。
質問の内容は、おおむね次のようなテーマで構成されています。
- 自分が吸うつもりだったよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがあるか
- 禁煙や本数を減らそうとして、うまくいかなかったことがあるか
- 禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてたまらなくなったことがあるか
- 禁煙や本数を減らしたときに、イライラ、落ち着かない、集中しにくい、眠気などの症状が出たことがあるか
- そうした症状を消すために、またタバコを吸い始めたことがあるか
- 重い病気にかかったときに、よくないとわかっていても吸ってしまったことがあるか
- タバコのせいで健康に問題が起きているとわかっていても吸ってしまったことがあるか
- タバコのせいで精神的な問題が起きているとわかっていても吸ってしまったことがあるか
- 自分はタバコに依存していると感じることがあるか
- タバコが吸えないような仕事や付き合いを避けることが何度かあったか
上記は質問の趣旨をわかりやすくまとめたもので、実際の問診票の文言とは異なります。正式なテストは受診先の医療機関で受けてください。
セルフチェックのポイント
受診前に、上のテーマについて自分に当てはまるものがいくつあるか数えてみると、おおよその目安になります。「減らそうとしても結局もとに戻ってしまう」「吸えないとイライラする」といった経験が複数ある方は、ニコチン依存症と判定される可能性があります。
ただし、最終的な判定は医師のもとで行われます。セルフチェックの結果が5点未満だったとしても、自己判断で受診をあきらめる必要はありません。気になる方は医療機関に相談してみましょう。
条件2:ブリンクマン指数とは?計算方法と注意点
ブリンクマン指数(喫煙指数)は、これまでにどのくらいタバコを吸ってきたかを示す数値で、次の式で計算します。
ブリンクマン指数 = 1日の平均喫煙本数 × 喫煙年数
保険適用の条件としては、35歳以上の方はブリンクマン指数が200以上であることが求められます。35歳未満の方については、2016年度の診療報酬改定でこの要件が撤廃されており、喫煙歴が短い若い世代でも保険で禁煙治療を受けやすくなっています。
ブリンクマン指数の計算例
| 1日の本数 | 喫煙年数 | ブリンクマン指数 | 35歳以上の場合 |
|---|---|---|---|
| 20本 | 10年 | 200 | 条件を満たす |
| 15本 | 20年 | 300 | 条件を満たす |
| 10本 | 15年 | 150 | 条件を満たさない |
| 5本 | 30年 | 150 | 条件を満たさない |
たとえば40歳で、20歳から1日20本を吸い続けてきた方の場合、20本×20年=400となり、条件を満たします。一方、1日の本数が少ない方や、途中で長く禁煙していた期間がある方は、200に届かないこともあります。
喫煙本数が時期によって違う場合は?
若い頃は1日10本、仕事が忙しくなってからは20本など、時期によって本数が変わっている方も多いでしょう。その場合は、時期ごとに「本数×年数」を計算して合計する考え方が一般的です。途中で禁煙していた期間は、喫煙年数に含めません。正確に思い出せなくても問題ありませんので、おおよその数字をメモして受診するとスムーズです。
加熱式タバコの場合の本数の数え方
2020年度の診療報酬改定により、加熱式タバコの使用者も保険による禁煙治療の対象となりました。加熱式タバコの場合は、1日に使うスティックやカプセルなどの数をもとに申告するのが一般的です。具体的な数え方は受診先の問診で確認されますので、紙巻きタバコから切り替えた方は、それぞれの時期の使用量と期間をメモしておきましょう。加熱式タバコについて詳しくは加熱式タバコと禁煙外来の記事で解説しています。
条件3・4:禁煙の意思と同意書とは?
「ただちに禁煙したい」という意思があること
保険適用の禁煙治療は、「すぐに禁煙を始めたい」という意思がある方が対象です。「いつかはやめたい」「本数を減らせればいい」という段階では、保険適用の対象とならない場合があります。
とはいえ、「本当にやめられるか不安」という気持ちがあるのは自然なことです。不安があるからこそ医師のサポートを受けるのであって、自信満々である必要はありません。「禁煙に取り組む覚悟がある」という意思を医師に伝えられれば十分です。
禁煙治療の説明を受け、文書で同意すること
初診時には、禁煙治療の内容やスケジュール、使用する薬剤などについて医師から説明があり、その内容に同意したうえで同意書に署名します。わからないことがあれば、この時点で遠慮なく質問しておきましょう。特に、処方薬の副作用や、通院の頻度、途中で通えなくなった場合の対応などは事前に確認しておくと安心です。
前回の禁煙治療から1年経過していることも条件
過去に保険適用の禁煙治療を受けたことがある方は、前回の治療の初回診察日から1年以上経過していないと、再び保険で治療を受けることができません。
ここで注意したいのは、「治療が終わった日から1年」ではなく「前回の初回診察日から1年」が基準になる点です。たとえば前回、12週間のプログラムを途中でやめてしまった場合でも、初回診察日から1年が経過していれば、再度保険で治療を受けられる可能性があります。
以前に禁煙外来を受診したことがある方は、初めて受診した時期をおおよそ思い出しておくと、受付や問診がスムーズです。
保険適用の条件を満たさない場合はどうする?
条件を満たさない場合でも、禁煙治療をあきらめる必要はありません。主に次のような選択肢があります。
- 自由診療の禁煙外来を利用する:保険は使えず全額自己負担になりますが、医師の診察のもとで禁煙補助薬の処方を受けられます。
- 市販の禁煙補助薬を使う:ニコチンパッチやニコチンガムはドラッグストアなどで購入でき、薬剤師に相談しながら使えます。
- 職場や自治体の禁煙支援を確認する:健康保険組合や自治体によっては、禁煙治療の費用を助成する制度を設けている場合があります。
保険適用と自由診療の費用の違いについては禁煙外来の費用はいくら?で詳しく紹介しています。
インターネット上には、処方薬と同じ成分の禁煙補助薬を個人輸入で購入できるとうたうサイトもあります。しかし、個人輸入した医薬品は偽造品や品質不良のおそれがあり、健康被害が起きても公的な救済制度の対象外になるなど、リスクが大きいため推奨されません。処方薬は必ず医師の診察のもとで使用しましょう。
保険適用の禁煙外来を受診するときの注意点
保険診療に対応している医療機関か確認する
禁煙外来を掲げている医療機関でも、保険診療に対応しているとは限りません。予約時に「保険で禁煙治療を受けたい」と伝え、対応しているかを確認しましょう。全国の禁煙外来をエリアから探すページでは、お住まいの地域や職場の近くの医療機関を探すことができます。
処方薬の種類や供給状況も確認する
飲み薬のバレニクリンは、2021年以降に出荷停止が続いた経緯があり、供給状況は時期によって変わります。保険適用で使える禁煙補助薬には貼り薬(ニコチンパッチ)もありますが、どの薬を選べるかは医療機関や時期によって異なるため、受診先で確認しておきましょう。
オンライン診療との組み合わせ
保険適用の禁煙治療でも、オンライン診療を組み合わせられる場合があります。ただし、初診の扱いや医療機関の対応状況によって異なるため、希望する場合は事前に問い合わせてください。詳しくは禁煙のオンライン診療の記事をご覧ください。
まとめ
禁煙外来で保険が適用されるには、TDSでニコチン依存症と判定されること、35歳以上ならブリンクマン指数が200以上であること、ただちに禁煙したいという意思があること、文書で同意することの4つが主な条件です。過去に保険で治療を受けた方は、前回の初回診察日から1年が経過していることも必要です。
受診前に喫煙本数や喫煙年数、過去の禁煙治療の時期をメモしておくと、スムーズに治療を始められます。条件に当てはまるかどうか迷う場合も、まずは医療機関に相談してみることをおすすめします。
この記事のポイント
- TDSは10項目の質問で、5点以上でニコチン依存症と判定される
- 35歳以上はブリンクマン指数(1日の本数×喫煙年数)200以上が条件。35歳未満はこの要件なし
- ただちに禁煙する意思と、文書による同意が必要
- 過去に保険で治療した場合は、前回の初回診察日から1年経過が必要
- 条件を満たさなくても、自由診療や市販薬などの選択肢がある
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。