「健康診断で血圧が高めと言われた」「血糖値やコレステロールで薬を飲んでいる」「持病があるのに、タバコだけはやめられていない」。生活習慣病を指摘されている方の中には、こうした状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
高血圧・糖尿病・脂質異常症は、いずれも血管に負担をかけ、動脈硬化を進める要因とされています。そして喫煙もまた、動脈硬化の大きな危険因子のひとつです。持病がある方にとって、禁煙は「健康のためにできることのひとつ」ではなく、特に優先度の高い対策といえます。
この記事では、喫煙と生活習慣病の関係、持病がある人の禁煙をかかりつけ医に相談するメリット、禁煙補助薬や服用中の薬についての注意点を解説します。具体的な治療方針は、必ず主治医と相談して決めてください。
喫煙はなぜ血管に悪いのか
タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などは、血管にさまざまな負担をかけると考えられています。
- 血管を縮める:ニコチンには血管を収縮させ、血圧や心拍数を一時的に上げる作用があるとされています
- 血管の内側を傷つける:有害物質によって血管の内側の壁が傷つき、動脈硬化が進みやすくなると考えられています
- 血液を固まりやすくする:血栓(血のかたまり)ができやすくなるといわれています
- 酸素を運ぶ力を下げる:一酸化炭素が血液中の酸素の運搬を妨げるとされています
動脈硬化が進むと、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの病気につながるおそれがあります。喫煙は、これらの病気の重要な危険因子とされています。
生活習慣病と喫煙が重なると何が起こる?
高血圧・糖尿病・脂質異常症は、それぞれ単独でも動脈硬化の危険因子とされています。ここに喫煙が加わると、危険因子が重なり、心臓や脳の血管の病気のリスクがさらに高まると考えられています。危険因子は「足し算」ではなく、重なるほど影響が大きくなるともいわれています。
| 持病 | 喫煙との関係として指摘されていること | 禁煙で意識したいこと |
|---|---|---|
| 高血圧 | 喫煙するたびに血圧が一時的に上がるとされ、血管への負担が重なる | 家庭血圧を記録し、禁煙前後の変化を主治医と共有する |
| 糖尿病 | 喫煙は血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性や、合併症のリスクを高めることが指摘されている | 禁煙後の食欲増加や体重の変化に注意し、血糖の管理を主治医と相談する |
| 脂質異常症 | 喫煙は善玉(HDL)コレステロールを下げる方向に働くといわれている | 食事・運動の見直しとあわせて禁煙に取り組む |
| 肥満・メタボリックシンドローム | 危険因子が重なりやすく、喫煙が加わると血管への負担がさらに大きくなると考えられる | 体重管理と禁煙を「どちらか」ではなく、主治医と優先順位を決めて進める |
※上記は一般的に指摘されている内容であり、影響の程度には個人差があります。ご自身の状態については主治医にご確認ください。
「薬を飲んでいるから大丈夫」ではない
血圧やコレステロールを薬でコントロールしていても、喫煙を続けていれば、喫煙による血管への負担は続きます。薬による治療と禁煙は、どちらかで代わりになるものではなく、両方が大切と考えられています。
持病がある人こそ、かかりつけ医に禁煙を相談しやすい
生活習慣病で定期的に通院している方は、すでに自分の体の状態をよく知る医師がいるという点で、禁煙を始めやすい環境にあるといえます。
かかりつけ医に相談するメリット
- 持病や服用中の薬を踏まえて相談できる:禁煙補助薬が使えるかどうかや、飲み合わせを確認してもらいやすい
- 禁煙前後の数値の変化を一緒に見てもらえる:血圧や血糖、体重の変化を継続的に確認できる
- いつもの通院の流れで相談できる:新しい医療機関を探す手間が少ない
- 必要に応じて紹介してもらえる:かかりつけ医が禁煙外来を行っていない場合も、適した医療機関を紹介してもらえることがあります
かかりつけ医が禁煙外来を行っているかどうかは、次回の受診時に聞いてみるのが確実です。禁煙外来を行っていない場合でも、禁煙したいと伝えることで、相談先のアドバイスがもらえることがあります。
禁煙外来で保険適用の治療を受けるには一定の条件があります。条件については禁煙外来の保険適用条件で解説しています。
禁煙補助薬と持病・服用中の薬の注意点
禁煙外来で使われる禁煙補助薬には、ニコチンを含まない飲み薬(バレニクリン)と、ニコチンを補う貼り薬(ニコチンパッチ)などがあります。どちらを使えるか、どのように使うかは、持病や体の状態によって異なります。
| 確認したいこと | 主なポイント |
|---|---|
| 心臓や血管の病気がある | 病気の種類や時期によっては、ニコチンを含む禁煙補助薬が使えない、または慎重に使う必要がある場合があります |
| 腎臓の機能が低下している | 飲み薬の量の調整が必要になる場合があります |
| 糖尿病の治療中 | 禁煙による食欲や体重の変化、体調の変化を踏まえて、血糖管理を主治医と相談します |
| 心の病気の治療中・既往がある | 禁煙中の気分の変化に注意が必要とされるため、主治医に伝えておきます |
| 車の運転や機械の操作をする | 飲み薬では、運転などに関する注意があります。仕事内容も医師に伝えましょう |
薬の種類や特徴は禁煙補助薬の種類と特徴で詳しく解説しています。
禁煙すると、ほかの薬の効き方が変わることも
タバコの煙に含まれる成分は、一部の薬が体内で分解される速さに影響することが知られています。そのため、禁煙すると、一部の薬の血液中の濃度が変わり、効き方が変化する可能性があると指摘されています。
持病の薬を飲んでいる方は、禁煙を始める前に、主治医や薬剤師に「禁煙を始める予定」であることを伝えておきましょう。複数の医療機関にかかっている場合は、それぞれの医師に伝えておくと安心です。
自己判断で持病の薬を減らしたり、やめたりすることは避けてください。禁煙中に動悸、胸の痛み、強いふらつき、気分の落ち込みなど気になる症状が出た場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
市販の禁煙補助薬を使う場合も相談を
ニコチンパッチやニコチンガムには、薬局などで購入できる市販品もあります。持病がある方や、ほかの薬を飲んでいる方は、使用前に医師や薬剤師に相談してください。添付文書の注意事項も必ず確認しましょう。インターネットでの個人輸入などで入手した薬は、品質や安全性が確認できないため使用は避けてください。
禁煙後の体重増加と生活習慣病の管理
持病がある方が禁煙するときに気になりやすいのが、体重の増加です。禁煙後は食欲が増したり、口寂しさから間食が増えたりして、体重が増えることがあります。
体重が増えると血圧や血糖に影響することもあるため、「禁煙したら数値が悪くなるのでは」と心配になるかもしれません。しかし、喫煙を続けることによる血管への影響を考えると、禁煙の意味は大きいとされています。体重の変化は、主治医と相談しながら食事や運動で調整していくのが基本です。
禁煙と体重管理を両立するポイント
- 禁煙前の体重・血圧・血糖などの数値を記録しておく
- 間食は量と時間を決め、低カロリーのものを用意しておく
- 食後すぐの歯みがきや散歩など、「食後の一服」の代わりの行動を決めておく
- 体重が気になっても、禁煙をやめる判断は自分だけでしない
食事や生活習慣の工夫は禁煙しても太らないための食事と生活習慣を参考にしてください。
健康診断の結果を禁煙のきっかけにする
毎年の健康診断は、自分の血管の状態を考えるよい機会です。結果票を見るときは、「基準値内かどうか」だけでなく、前年からどう変化しているかにも注目してみましょう。喫煙者が特に意識したい項目を整理しました。
| 健康診断の項目 | 関係する生活習慣病 | 見るときのポイント |
|---|---|---|
| 血圧 | 高血圧 | 健診当日だけでなく、家庭で測った血圧の記録もあわせて確認する |
| 空腹時血糖・HbA1c | 糖尿病 | 年々少しずつ上がっていないかを確認する |
| LDL・HDLコレステロール、中性脂肪 | 脂質異常症 | 善玉(HDL)コレステロールが低めになっていないかにも注目する |
| 腹囲・体重 | 肥満・メタボリックシンドローム | 禁煙後に体重が変化した場合も、記録しておくと相談しやすい |
| 問診票の喫煙欄 | すべてに関係 | 保健指導などで禁煙の相談ができる場合もある |
「要再検査」「要精密検査」「要治療」と書かれた項目がある場合は、そのままにせず医療機関を受診しましょう。その受診の際に、喫煙していることと禁煙を考えていることをあわせて伝えると、持病の管理と禁煙を一緒に相談しやすくなります。
主治医に禁煙を相談する前の準備リスト
限られた診察時間の中で相談をスムーズに進めるために、次の情報をメモにまとめておきましょう。
- 喫煙の状況:1日の本数、喫煙年数、紙巻き・加熱式などの種類
- 過去の禁煙経験:何回挑戦したか、どのくらい続いたか、何がつらかったか
- 服用中の薬:お薬手帳を持参し、市販薬やサプリメントも伝える
- ほかに通院している医療機関:診療科や持病の内容
- 仕事や生活の状況:車の運転の有無、夜勤の有無など
- 希望:飲み薬・貼り薬の希望、通院の頻度、オンライン診療の希望など
ニコチン依存の程度は、ニコチン依存度セルフチェックで事前に確認しておくと、相談の際の参考になります。
持病がある人の禁煙に関するよくある質問
持病があっても禁煙外来に通えますか?
持病がある方も禁煙外来を受診できます。むしろ、持病がある方は医師のサポートのもとで禁煙を進めるメリットが大きいといえます。ただし、使用できる禁煙補助薬は体の状態によって異なるため、診察の際に持病や服薬について必ず伝えてください。
かかりつけ医と禁煙外来、どちらに行けばいいですか?
かかりつけ医が禁煙外来を行っている場合は、持病の管理と一緒に相談できるため便利です。行っていない場合は、ほかの医療機関の禁煙外来を受診し、かかりつけ医には禁煙治療を受けていることと処方された薬を伝えておきましょう。お近くの医療機関は全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。
本数を減らすだけではだめですか?
本数を減らすことは一歩前進ですが、少ない本数でも心臓や血管への影響はあるとされています。持病がある方は特に、完全にやめることを目標にしましょう。
まとめ
喫煙は動脈硬化の危険因子のひとつであり、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病と重なると、心臓や脳の血管の病気のリスクがさらに高まると考えられています。薬で数値をコントロールしていても、喫煙による負担は別に続くため、持病がある人こそ禁煙が大切です。
定期的に通院している方は、かかりつけ医に禁煙を相談しやすい環境にあります。禁煙補助薬が使えるかどうかや、禁煙による薬の効き方の変化など、持病がある人ならではの注意点もあるため、自己判断せず医師や薬剤師と相談しながら進めましょう。
この記事のポイント
- 喫煙は動脈硬化の危険因子のひとつで、心筋梗塞や脳梗塞などにつながるおそれがある
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症と喫煙が重なると、リスクがさらに高まると考えられている
- 持病の薬を飲んでいても、喫煙による血管への負担は続く
- 禁煙補助薬が使えるかどうかや、禁煙による薬の効き方の変化は医師・薬剤師に確認する
- 定期通院している人は、かかりつけ医に禁煙を相談するところから始めやすい
本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。