禁煙外来の基礎知識

20代・30代の禁煙外来|35歳未満の保険適用条件と若いうちに禁煙するメリット

「まだ20代だし、禁煙外来に行くほどではない」「喫煙歴が短いから保険は使えないのでは」「職場や友人との付き合いがあって、やめるタイミングがない」。若い世代の喫煙者からは、こうした声がよく聞かれます。

実は、35歳未満の方は「1日の喫煙本数×喫煙年数」の要件がなく、喫煙歴が短くてもほかの条件を満たせば保険で禁煙治療を受けられます。この記事では、20代・30代が禁煙外来を利用するときの保険適用の条件、若いうちに禁煙するメリット、そして若い世代ならではの悩みへの具体的な対処法をまとめました。

なお、20歳未満の喫煙は法律で禁止されています。この記事は20歳以上の方を対象としています。20歳未満の方の禁煙の相談は、保護者や学校の保健室、医療機関などに相談してください。

20代・30代でも禁煙外来は受診できる

禁煙外来は、年齢や喫煙歴の長さに関係なく受診できます。禁煙外来ではニコチン依存症を「治療が必要な病気」としてとらえ、医師の診察のもとで禁煙補助薬を使いながら、12週間かけて禁煙を目指すのが一般的です。

若い世代は「自分は依存していない」「やめようと思えばいつでもやめられる」と感じやすい傾向があります。しかし、喫煙歴が短くても、朝起きてすぐ吸いたくなる、吸えない場所でそわそわする、やめようとして何度か失敗している、といった状態があれば、ニコチン依存が進んでいる可能性があります。自分の依存度が気になる方は、ニコチン依存度セルフチェックで確認してみてください。

禁煙外来そのものの流れについては、禁煙外来とは?で詳しく解説しています。

35歳未満の保険適用条件|喫煙本数×年数の要件はない

禁煙治療に健康保険が使えるかどうかは、いくつかの条件で決まります。このうち「ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上」という条件は、35歳以上の方にのみ適用されます。35歳以上と35歳未満の違いを表にまとめました。

主な条件35歳以上35歳未満
ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で5点以上必要必要
ブリンクマン指数(1日の本数×喫煙年数)200以上必要不要
ただちに禁煙したいという意思がある必要必要
治療について説明を受け、文書で同意する必要必要
過去に保険で禁煙治療を受けた場合、前回の初回診察日から1年以上経過必要必要

たとえば、25歳で1日10本を5年間吸っている方のブリンクマン指数は「10×5=50」です。35歳以上であれば200に届かず保険の対象外になりますが、35歳未満であればこの要件自体がないため、TDSなどほかの条件を満たせば保険で治療を受けられます。

保険適用の条件の詳細や、条件を満たさない場合の選択肢については、禁煙外来の保険適用条件もあわせてご覧ください。

なぜ35歳未満は要件がなくなったのか

以前は年齢に関係なくブリンクマン指数200以上が条件でした。しかし、若い人は喫煙年数が短いため、ニコチン依存が強くても指数が200に届かず、保険で治療を受けられないという課題がありました。そこで2016年度の診療報酬改定で、35歳未満の方についてはこの要件が撤廃されました。若いうちから禁煙治療を受けやすくすることが目的のひとつとされています。

保険適用になっても確認しておきたいこと

  • TDSの判定:10項目の質問で5点以上がニコチン依存症の目安。5点未満の場合は保険の対象外となり、自由診療や市販の禁煙補助薬を検討します
  • 医療機関が保険診療の禁煙治療を行っているか:保険で禁煙治療を行うには医療機関側にも施設基準があるため、予約時に確認しましょう
  • 使える薬:飲み薬のバレニクリンは2021年以降に出荷停止が続いた経緯があり、供給状況は時期によって変わります。どの薬を使えるかは受診先で確認してください

若いうちに禁煙するメリット

禁煙は何歳から始めても体によい変化が期待できますが、若いうちにやめることには特有のメリットがあります。

健康への影響を小さくしやすい

喫煙による病気のリスクは、吸ってきた量や期間が長いほど高まると考えられています。一般に、早い年齢で禁煙するほど、喫煙による健康への影響を小さくできるといわれています。息切れや咳、体力の低下などは若いうちは自覚しにくいものですが、自覚症状が出る前にやめておくことに意味があります。

お金の差が大きくなる

若い世代ほど、これから先にタバコを吸い続ける期間が長くなります。1箱600円と仮定して、1日あたりの本数別に65歳までのタバコ代を試算してみました。実際の価格は銘柄や今後の値上げによって変わるため、あくまで目安としてご覧ください。

禁煙を始める年齢65歳までの年数1日1箱の場合1日半箱の場合
25歳40年約876万円約438万円
30歳35年約767万円約383万円
35歳30年約657万円約329万円

加熱式タバコの方は、ご自身が使っている製品の価格に置き換えて計算してみましょう。本数と価格を掛け合わせると、おおよその金額を確認できます。

見た目・日常生活の変化

禁煙すると、口臭や衣服・髪のにおい、歯の着色などが気になりにくくなります。階段や運動で息が上がりにくくなったと感じる方もいます。喫煙所を探す手間やタバコ休憩の時間がなくなり、時間の使い方に余裕が生まれるのも見逃せないポイントです。

将来の生活の変化に備えられる

結婚、妊娠・出産、子育て、転職など、20代・30代はライフイベントが多い時期です。妊娠を考えている方やパートナーが妊娠中の方は、本人の喫煙だけでなく受動喫煙も含めて影響を考える必要があります。家族やパートナーの健康のためにも、生活が大きく変わる前に禁煙しておくと安心です。なお、妊娠中や授乳中の方は使えない禁煙補助薬もあるため、受診時に医師に伝えてください。

若い世代ならではの悩みと対処法

20代・30代の禁煙では、体の依存だけでなく、人間関係や生活スタイルが壁になることが少なくありません。よくある悩みと対処のヒントを整理しました。

よくある悩み起こりやすい場面対処のヒント
付き合いで吸ってしまう飲み会、友人との集まり、喫煙者の先輩や上司との時間禁煙初期は飲み会を減らす。参加するときは禁煙中と先に伝え、喫煙者の隣を避ける
喫煙所のコミュニケーションが減る職場の喫煙所での雑談や情報交換休憩はコーヒーを買いに行くなど別の形で声をかける。喫煙所には近づかない
加熱式タバコならいいと思ってしまう紙巻きから加熱式に切り替えて満足している加熱式もニコチンを含み、依存は続く。加熱式のみの方も禁煙外来の対象になる
治療費が負担に感じる新社会人や学生で手取りが少ない保険適用なら3割負担で約1万3千円〜2万円程度が目安。12週間のタバコ代と比べて考える
平日に通院する時間がない仕事の勤務時間と診療時間が重なる土日や夜間に診療する医療機関、オンライン診療を組み合わせられる医療機関を探す
パートナーや友人も喫煙者同居・同棲中、一緒に吸う習慣がある一緒に禁煙に取り組む、または家の中や自分の前では吸わないよう頼む
ストレス発散の手段がほかにない仕事の悩み、人間関係のストレス運動、音楽、散歩など、タバコ以外にほっとできる方法を複数用意する

加熱式タバコを使っている方へ

若い世代では、紙巻きタバコではなく加熱式タバコを使っている方も多くいます。加熱式タバコにもニコチンが含まれているため、ニコチン依存は続きます。加熱式タバコのみを使っている方も、条件を満たせば保険で禁煙治療を受けることができます。詳しくは加熱式タバコも禁煙外来の対象?をご覧ください。

費用面での工夫

保険適用の禁煙治療は、12週間・計5回の受診で、3割負担の場合は約1万3千円〜2万円程度が目安です。一方、1日1箱(600円で試算)吸う方の場合、同じ12週間のタバコ代は約5万円になります。勤務先の健康保険組合や自治体によっては、禁煙治療の費用を補助する制度を設けていることもあるため、加入している健康保険組合のウェブサイトなどを確認してみましょう。

受診前に準備しておきたいチェックリスト

初めて禁煙外来を受診する前に、次の項目を確認・準備しておくと、当日の診察がスムーズになります。

  • □ 1日に吸う本数(加熱式タバコの場合は1日に使う本数)をメモした
  • □ 吸い始めた年齢と、これまでの禁煙の経験をメモした
  • □ 過去に保険で禁煙治療を受けたことがあるか、ある場合はその時期を確認した
  • □ 持病や服用中の薬、妊娠の可能性について伝える準備をした
  • □ 受診する医療機関が保険診療の禁煙治療を行っているか確認した
  • □ 12週間で計5回程度の通院スケジュールを確保できるか確認した
  • □ 禁煙を始めたい時期の候補を考えた(大きな飲み会や繁忙期の直前は避けると取り組みやすい)
  • □ 健康保険証(またはマイナ保険証)を用意した

20代・30代の禁煙外来Q&A

Q. 親の扶養に入っていますが、保険で受診できますか?

A. 扶養家族(被扶養者)であっても、条件を満たせば保険で禁煙治療を受けられます。ただし、健康保険によっては、医療費の内容をまとめた通知が被保険者(扶養している家族)あてに届く場合があります。気になる方は、加入している健康保険の運用を確認しておきましょう。

Q. 1日数本しか吸っていなくても受診していいですか?

A. 受診できます。本数が少なくても、TDSで5点以上であればニコチン依存症と判定される可能性があり、35歳未満であれば本数×年数の要件もありません。TDSが5点未満の場合は保険の対象外になりますが、自由診療や市販の禁煙補助薬を使う方法もあるため、医師や薬剤師に相談してみましょう。

Q. 禁煙外来に通っていることが職場に知られますか?

A. 受診した内容が医療機関から勤務先に直接伝えられることは通常ありません。ただし、通院のために勤務時間を調整する必要がある場合は、自分から伝えることも選択肢です。職場によっては禁煙を応援する取り組みを行っていることもあります。

Q. 一度失敗して吸ってしまったら、もう保険は使えませんか?

A. 保険で禁煙治療を受けた場合、次に保険で治療を受けられるのは前回の初回診察日から1年以上経過してからです。治療期間中に吸ってしまった場合は、自己判断で通院をやめずに、まず医師に相談しましょう。そこから立て直せるケースも少なくありません。

近くの禁煙外来を探すには

仕事帰りや休日に通いやすい医療機関を選ぶことが、12週間の治療を続けるうえで大切です。職場の近くか自宅の近くか、土日や夜間の診療があるか、オンライン診療を組み合わせられるかなどを比べてみましょう。お近くの医療機関は、全国の禁煙外来をエリアから探すから検索できます。

禁煙補助薬を海外から個人輸入したり、正規でない通販で購入したりすることは、偽造品や健康被害のリスクがあるため推奨されません。医師の診察のもとで使用しましょう。

まとめ

2016年度の診療報酬改定により、35歳未満の方は「1日の喫煙本数×喫煙年数200以上」の要件がなくなりました。喫煙歴が短くても、TDSで5点以上、ただちに禁煙したい意思があること、文書での同意などの条件を満たせば、保険で禁煙治療を受けられます。

若いうちに禁煙すると、健康への影響を小さくしやすいだけでなく、将来にわたるタバコ代の差も大きくなります。付き合いや加熱式タバコ、費用、通院時間など若い世代ならではの悩みは、事前に対策を考えておくことで乗り越えやすくなります。「まだ若いから」と先延ばしにせず、まずは自分の依存度と保険適用の条件を確認してみてください。

この記事のポイント

  • 2016年度の改定で、35歳未満は「1日の本数×喫煙年数200以上」の要件がなくなった
  • TDS5点以上、禁煙の意思、文書での同意などの条件は年齢に関係なく必要
  • 20歳未満の喫煙は法律で禁止されており、この記事の対象外
  • 若いうちに禁煙すると、健康面の影響を小さくしやすく、将来のタバコ代の差も大きい
  • 付き合い・加熱式・費用・通院時間などの悩みは、事前の対策で乗り越えやすくなる

本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の可否や費用、使用できる薬剤は医療機関によって異なるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。

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